The Linux Foundationは2017年5月31日、トヨタ自動車が新型「カムリ」の車載機器のソフトウェア基盤として「Automotive Grade Linux」を採用したと発表した。新型カムリは今夏にアメリカで発売の予定。Automotive Grade Linuxを採用した自動車が市場に出るのはこれが初めてとなる。
図 2018年型のトヨタ「カムリ」。今夏にアメリカで発売の予定となっている
出所 Toyota Motor North America
トヨタ自動車は、次世代の車載インフォテインメントシステム(カーナビゲーション、音楽プレーヤー、テレビなどの機器類)のソフトウェア基盤としてAutomotive Grade Linuxを採用した。そして、その次世代車載インフォテインメントシステムを搭載して市場に出る初の車両がカムリとなった。その後、トヨタが発売する車両(レクサスブランドの車両も含む)には次世代車載インフォテインメントシステムが載るという。
Automotive Grade Linuxは、車載機器のソフトウェアの業界標準とすることを目指して、The Linux FoundationのAutomotive Grade Linuxプロジェクトが開発を続けているもの。Automotive Grade Linuxが業界標準となることで、メーカーごとのソフトウェア部品の細かな違い(フラグメンテーション)が発生することを防ぐことができ、メーカー間でコードの再利用が進む。その結果メーカーは、ソフトウェア開発コストを抑えることができ、企画した商品を素早く市場に投入できるようになるという。
Automotive Grade Linuxプロジェクトには、トヨタ自動車のほかスズキ、マツダ、デンソー、パナソニック、ルネサスエレクトロニクスの6社がPlatinum Membersとして中心的な役割を果たしているほか、100以上の自動車メーカー、ソフトウェアメーカー、半導体メーカーなどが参加して活動している。
トヨタ自動車 コネクティッドカンパニーのExecutive Vice Presidentを務める山本圭司氏は、「Automotive Grade Linuxのソフトウェア基盤は柔軟な作りだ。そのおかげでトヨタ自動車の次世代車載インフォテインメントシステムを、新車種に素早く展開することができた。また、オープンソースソフトウェアの開発手法を取り入れることで、新機能の開発に集中することができ、市場に製品を早く出すことができた」と語っている。
Automotive Grade LinuxプロジェクトのExecutive Directorを務めるDan Cauchy氏は、「トヨタ自動車は早期からLinuxとオープンソースソフトウェアを採用しており、Automotive Grade Linuxプロジェクトの活動にも積極的で、大きく貢献している。Automotive Grade Linuxを採用した車載インフォテインメントシステムの基盤となる部分の開発も、彼らが先頭に立って引っ張っている。彼らが業界を牽引する姿を見て、私たちは大いに刺激を受けた」とコメントしている。
Automotive Grade Linuxは、現在のところ車載インフォテインメントシステムの基盤となることを目指しているが、いずれは運転支援システムや自動運転システムの基盤となることを目標としているという。