ヤマトホールディングスは2017年6月29日、傘下にある一般社団法人ヤマトグループ総合研究所(ヤマト総研)が物流トラックの納品作業の効率を大きく高める技術を開発したと発表した。開発した技術の実用化に向けて、日用品大手のライオンの協力を得て7月3日から実証実験を実施する。
今回の技術開発の背景には、物流トラックが納品先で長い待ち行列を作ったり、納品時の検品作業に時間がかかりすぎて業務効率が上がらないなどの問題がある。現在は、物流トラックが納品先に到着しても、納品受付が始まっていないためトラックが待ち行列を作って納品受付開始を待っている。また、納品が始まっても入庫検品作業が人間の目視や専用用紙への手書きで進むため、トラックのドライバーは納品完了まで長時間待たされている。
納品先の入庫スペースにあまり余裕が無いようなときは、納品完了後に商品を片付けるまで次の納品作業を始められないというときもある。さらに、納品先の都合で優先的に納品作業の取りかかりたい商品があるとしても、その商品を載せたドラックがどれで、いつ到着するのか知るすべがなかったため、その後の業務が遅れるという問題もある。
図 現在は納品先で物流トラックが待ち行列を作り、入庫検品作業も手作業に頼っているので、納品完了まで時間がかかっている
出所 ヤマトホールディングス
そこでヤマト総研は、発送元からの出庫時に出庫する商品の明細を記録した事前出庫明細データを作成するようにした。このデータは、どの物流パレットにどんな商品がいくつ載っていて、そのパレットを運ぶトラックがどれなのかといった情報をまとめたものだ。データを作成したらインターネット上のサーバーに送信し、サーバーは納品先にそのデータを送る。
納品先はどの商品をどのトラックが運んでくるのかがすぐに分かるので、優先的に受け付けたい商品を載せたトラックを先に受け入れるなど、入庫スケジュールを綿密に組み立てることができる。そして入庫スケジュールは、物流トラックの運転手が持つスマートフォンの専用アプリケーションで通知できる。アプリケーションを通してスケジュールの確認や連絡ができるので、道路事情などの都合で指定の時間に間に合わないなどといったときには連絡を交換しながらスケジュールを調整できる。運転手は調整した時間帯を予約し、その時間に受付に向かえば良いので、待ち行列を作る必要はない。
また、物流パレットにはUHF帯ICタグ(RFID:Radio Frequency IDentifier)が付いており、RFIDと事前出庫明細データをひも付けてある。入庫検品作業時は、専用の読取機でRFIDを読み取るだけで検品作業が完了するので、作業時間を大幅に短縮できる。
図 ヤマト総研が新しく開発した手法なら、待ち時間を排除でき作業時間を大幅に短縮できる
出所 ヤマトホールディングス
ライオンの協力を得て実施する実証実験の期間は7月3日~9月29日。大阪府茨木市にある「ライオン西日本保管倉庫」と、愛知県小牧市にある「ライオン小牧流通センター」の間の商品のやり取りに、今回開発した手法を取り入れて、その効果を検証する。ヤマト総研は実証実験の効果を2017年12月までに検証し、実用化を目指す。当初はライオンの自社内物流のみを対象とするが、いずれ日用品業界全体に応用する計画だ。さらにトラック運送会社や、業務の一環としてトラックによる運送業務を実施している企業、業界に向けて、今回開発した手法をサービスとして提供する構想も描いている。