Daimlerは2017年8月30日、カーシェアリング用に設計したコンセプトカー「smart vision EQ fortwo」を発表した。Daimlerは現在、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)という企業戦略を掲げているが、smart vision EQ fortwoは、CASEの各条件をすべて満たす初めての車種になるという。Daimlerは9月14日~24日に開催予定のフランクフルトモーターショー(IAA:International Motor Show)で、smart vision EQ fortwoのほかにも「smart」ブランドの電気自動車(EV)を披露するとしている。
図 Daimlerが公開したコンセプトカー「smart vision EQ fortwo」
出所 Daimler
smart vision EQ fortwoは、DaimlerのCASE戦略の中でも、「Shared & Services」に注力して開発した車だ。車内には運転席はなく、2人の乗客が座れるシートがあるだけ。乗客の求めに応じて完全自動運転で運行することを想定している。
このコンセプトカーの開発に当たっては、Daimlerの子会社で、カーシェアリング事業を営んでいるドイツcar2go社のサービスを参考にしたという。car2go社は今や全世界に260万人以上のユーザーを抱え、1.4秒に1回のペースで世界中の誰かが利用しているという。そしてDaimlerによると、2025年には全世界のカーシェアリングサービスの利用者は3670万人を超えるという。
car2go社のサービスが成長した最大の要因として、「free-floating」型でサービスを提供した点にあるという。これは、都市の各所にある駐車場などにcar2go社の車両を自由に駐車できるようにし、利用者は駐車してある車両を自由に使え、使い終わったら最寄りの駐車ポイントに停車すれば良いという形だ。日本のレンタカーのように、店舗に足を運んで車両を借りて、使い終わったら店舗まで返しに行く必要がなく、極めて気軽に利用できるサービス形態だ。
smart vision EQ fortwoは、car2go社が提供しているサービスをさらに進んだ形で提供することを目指している。運転手を廃した完全自動運転で、都市部のサービスエリアを走り回り、ユーザーからの利用希望を受けたら、ユーザーがいるところに直行する。ユーザーはスマートフォンのアプリケーションで、車両を呼び出せる。現在、car2go社が提供しているサービスでは、利用可能な車両がどこに停まっているかを探す必要があるが、smart vision EQ fortwoは、車両が利用者のいるところを探し出して、その場所に自動的に向かうというわけだ。
smart vision EQ fortwoは、電源として蓄電容量30kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載している。やや物足りないとも感じる容量だが、「空車」状態の時に必要に応じて自動的に充電ステーションに向かい、充電する機能を備えるという。
乗客1人1人を認識する機能も大きな特徴だ。利用者の向かった先や、視聴した音楽や映像などを記録する。ある利用者が1人で乗車してきたときは、話し相手となるもう1人の乗客を推薦する機能も提供するという。全利用者の利用履歴を調べて、これから向かう先、過去に訪れた場所などから、同乗者を推薦する。話が合う同乗者が載ってきたら、スポーツや音楽など、2人に共通する趣味に関係する映像を、大型ディスプレイに映し出すという。
車体デザインを見ると、ひときわ目を引くのが、左右のドアだ。曲線を使ったデザインで、透明な素材でできている。そして、車体の大きさに比べると非常に大きい。小さな車体でも、簡単に出入りできるように配慮した結果だろう。そして、このドアの開け方にもスペースを節約する工夫が加わっている。普通の乗用車のように横に開くのではなく、ドア全体を上に回転させるように開く構造となっている。これならドアを開けても横に張り出すことがないので、狭い路地などでの乗り降りが楽になる。また、歩行者や自転車が開いたドアと接触するという事故も防げる。
図 「smart vision EQ fortwo」の左右のドアは上方向に回転させるように開く
出所 Daimler
Daimlerは2022年までに電気自動車の新車種を10車種以上発売すると予告している。Mercedes-Benzブランドのセダンから、大型SUV、smartブランドの小型車などを続々と「電化」していくとしている。
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