Daimlerと三井物産は2017年10月26日、ドイツで電気自動車(EV)向けサービスを提供しているThe Mobility House社に出資すると発表した。The Mobility House社は、2009年設立のベンチャー企業で、ヨーロッパでEV向け充電器とその制御システムを販売している。Daimlerとは大規模蓄電施設の建設で協力関係にある。この蓄電施設では、Daimler傘下のsmartが販売するEV「smart fortwo electric drive」の使い古しの蓄電池を大量に集めて再利用している。
図 Daimlerの協力を得て、「smart fortwo electric drive」の使い古しの蓄電池を大量に集めて構築した大規模蓄電施設
出所 Daimler
三井物産は欧米の自動車メーカーを中心に、EVへの移行を明確にしているメーカーは多く、今後はEVの普及が本格的に進むと考えている。しかし、特にヨーロッパの国々では送電系統に太陽光や風力など再生可能エネルギー由来の電力が相当量流れ込んでいる。太陽光や風力は気象条件や時間帯によって大きく変動する不安定なエネルギーであり、それを利用して作った電力も不安定なものだ。そのため、再生可能エネルギー由来の電力が普及しているヨーロッパなどの地域では、送電系統に重い負荷がかかっているという。
送電系統に負荷がかかると、ちょっとしたトラブルで不安定になりかねないのが現状だが、三井物産はEVが普及して充電のための電力需要が大きくなれば、送電系統はさらに不安定になると予測している。その対策として大規模蓄電施設による系統安定サービスや、電力の需給バランスに応じてEVに充電するタイミングを自動調整する機能が必要になると見ている。
The Mobility House社は、EVが内蔵する蓄電池を活用して送電系統を安定させるV2G(Vehicle to Grid)技術を開発しており、事業化を進めている。V2Gでは、送電系統を安定させるために送電事業者が個人のEVからの電力を使用したら、その代価をEV所有者に支払う。EV所有者は、自身のEVを充電器に接続して放置しておくだけで収入を得られる可能性がある。
三井物産は今回の出資で、The Mobility House社が開発しているV2Gなどの最先端サービスの事業化に協力する。三井物産には自動車、送電事業、発電所などエネルギー事業で積み重ねてきた経験とノウハウを持っており、そのノウハウを新事業立ち上げに役立てるとしている。そして、再生可能エネルギー由来の電力とEVの普及が進んでいるヨーロッパで先進的な事業の開発に取り組むことで、アメリカや日本など世界の各地域で事業拡大を狙うとしている。