村田製作所は2018年2月20日、太陽光発電システムのパワーコンディショナーとHVDC(高圧直流:High Voltage Direct Current)で連携する住宅向け定置型蓄電池「HVDC蓄電ユニット3.5kWh(パワーコンディショナ連係タイプ)」を発表した。2017年9月に買収を完了したソニーエナジー・デバイスの蓄電池技術と村田製作所の電源技術を融合させて開発した初の製品になるという。2018年年内の量産出荷開始を予定している。
図 村田製作所が新たに開発した住宅用定置型蓄電池「HVDC蓄電ユニット3.5kWh(パワーコンディショナ連係タイプ)」
出所 村田製作所
この製品は、住宅向け蓄電池に充放電DC-DCコンバータ、蓄電池管理システムを組み込んで一体にしたもの。住宅向け太陽光発電システムと接続すると、高圧直流(HVDC:High Voltage Direct Current Transmission)で太陽光発電モジュールが発電した電力を受けることができる。
既存のパワーコンディショナーと既存の住宅向け定置型蓄電池を組み合わせると、パワーコンディショナーが太陽光発電モジュールから受けた直流の電力を交流に変換して蓄電池に送電する。交流で受けた蓄電池は、交流を直流に変換して充電する。直流と交流の変換が最低でも2回発生するため、太陽光発電モジュールが発電した電力を蓄電池が充電するまでにそれなりの量の電力を損失する。
パワーコンディショナーが内蔵するDC-DCコンバータが、太陽光発電モジュールからの電力を直流のまま、高圧(350V~400V)まで電圧を上げ、蓄電池に送電する。蓄電池は高圧の直流で届いた電力を、内蔵のDC-DCコンバータで下げて、蓄電池に充電できる。太陽光発電モジュールが発電した電力を直流のまま、電圧を上げて蓄電池に送ることで、送電時の損失も最小限に抑えながら、直流と交流の変換に伴う損失も回避しているので、太陽光発電モジュールが発電した電力を、ほとんど損失することなく蓄電池に充電できる。ちなみに村田製作所が今回発表した蓄電池は、98%以上の効率で電力を変換する。
図 太陽光発電モジュールの電力をHVDCで蓄電池に送ることで、蓄電池が充電できる電力量を最大化する
出所 村田製作所
加えて、住宅内で蓄電池に充電した電力が必要になったときも、パワーコンディショナーにHVDCで送電して、送電に伴う損失を抑えている。蓄電池から電力を受け取ったパワーコンディショナーは、電圧を下げ、交流に変換して住宅に送る。
村田製作所が発表した住宅向け定置型蓄電池は、蓄電容量3.5kWの蓄電池を内蔵している。一般的な住宅向け定置型蓄電池と比べると、少なめだ。しかし、独自の蓄電池を採用することで、より大型の定置型蓄電池にも劣らない働きを見せる。ちなみに、村田製作所独自の蓄電池とは、ソニーエナジー・デバイスの買収に伴い供与を受けたもの。正極材に「オリビン型リン酸鉄」を採用したもので、電極の結晶構造が安定しており壊れにくい。この蓄電池の寿命はおよそ15年、充放電サイクル寿命は1万回~1万4000回に達する。
蓄電容量が少ないため、夜間に充電して電力需要が最も高い昼間に放電するという一般的な使い方は難しいが、蓄電池の充放電サイクル寿命が長いという特徴を活かして、1日に充放電を2回繰り返すことで、ほかの大容量の定置型蓄電池と変わらない効果を期待できるという。具体的には夜間に電力系統から、そして太陽光発電モジュールの発電量が最大に達する昼間に太陽光発電モジュールからの1日2回充電することで、朝から昼と、夕食前後の電力需要が高い2つの時間帯に蓄電池の電力を利用できる。
図 一般的な住宅向け定置型蓄電池は夜間に1回充電して、電力需要が高い昼間に比較的長い時間放電して、電力会社からの受電量を減らすが、村田製作所が開発した蓄電池は1日2回充電し、2回放電することで、蓄電容量の少なさという短所を補っている
出所 村田製作所
ほかの主な仕様は以下の通り。定格出力は3.5kW(3500W)動作環境の温度条件は-10℃から+45℃。外形寸法は幅641×高さ735×奥行き324mmで、本体重量は約72kg。なお村田製作所は、蓄電池に太陽光発電システムのパワーコンディショナーを組み込んだ住宅向け定置型蓄電池も発表した。内蔵蓄電池の蓄電容量は2kWhで、定格出力は連係運転時が4.0kw(4000W)で、自立運転時は2.0kW(2000W)。外形寸法は幅712×高さ735×奥行き324mmで、本体重量は75kg。
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