国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年2月28日、極東ロシアのサハ共和国で風力発電システムや蓄電池を利用した「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」の実証事業を開始すると発表した。場所はサハ共和国の北極海沿岸に位置するティクシ市。北極圏に入る港湾都市だ。
図 ティクシ市の位置。北極圏に入っている
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
極東ロシアには、大規模な送電網につながっていない地域が多数存在する。そのような地域では、小規模なディーゼル発電機を電源とする小規模な独立送電網を構成している。しかし、このような地域にディーゼル燃料を輸送するにはかなりのコストがかかるため、発電コストが高騰してしまっている。地方政府は、電力単価を大規模送電網につながっている地域とほぼ同等に維持するために補助しているが、これが財政的に大きな負担になっている。
今回の実証事業では、サハ共和国内で独立送電網を構築しているティクシ市に、風力発電設備や新しいディーゼル発電機、定置型蓄電池などを設置し、既存のディーゼル発電機と組み合わせた「ポーラーマイクログリッドシステム」を構築し、低コストな電力を安定して供給できることを実証する。
図 「ポーラーマイクログリッドシステム」の構成
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ポーラーマイクログリッドシステムでは、従来ディーゼル発電機のみに電力を頼っていたところに風力発電による電力を供給し、余剰電力を蓄電池に充電する。風力が落ちたときは、蓄電池に充電しておいた電力と、新設のディーゼル発電機から電力を供給して、電力需要に応える。さらに電力需要が上昇したときは、既設のディーゼル発電機も利用する。NEDOは風力発電設備とディーゼル発電機を組み合わせて効率良く運用することで、年間のディーゼル燃料消費量を16%ほど削減できると見込んでいる。
今回の事業では、ティクシ市に新しいディーゼル発電機と定置型蓄電池のほかに、極寒冷地仕様の風力発電設備(出力300kW×3基)を設置する。実証事業の期間は2018年2月から2021年2月の予定。