マツダ、エリーパワー、宇部興産は2018年3月15日、自動車に搭載する12Vリチウムイオン蓄電池を共同で開発すると発表した。この電池は鉛蓄電池を代替するもので、自動車の始動用電源として利用できるもの。エンジンルーム内の高温や衝突時の衝撃に耐える蓄電池を開発し、2021年までの実用化を目指すとしている。
現在の自動車の大部分は、エンジン始動用電源として鉛蓄電池を使用している。しかし、ヨーロッパなど鉛の使用を禁止する地域が増えつつある。また、鉛蓄電池は同等の性能のリチウムイオン蓄電池に比べて大きくて重いという課題がある。そこで、始動用電源としてリチウムイオン蓄電池を使用し、各国の規制を回避しながら、車両を軽量化して燃費を改善させようという動きがある。
しかし、始動用電源を搭載するエンジンルームは高温になるため、リチウムイオン蓄電池をそのまま搭載すると発熱し、最悪の場合は発火する恐れがある。また、自動車が前方から衝突するとエンジンルームに大きな衝撃が加わる。この衝撃もリチウムイオン蓄電池が発熱、発火する原因となる。このため、始動用電源にリチウムイオン蓄電池を採用することは難しかった。今回共同開発を表明した3社は、それぞれの技術を持ち寄ってこの課題を解決し、始動用電源として使用できるリチウムイオン蓄電池を開発するとしている。
マツダは、自動車の開発と性能評価にコンピュータシミュレーションを活用する「モデルベース開発(Model Based Development)」の技術をリチウムイオン蓄電池開発に応用する。蓄電池内の化学反応をシミュレーションで調査し、自動車が蓄電池を管理する技術を開発する。
エリーパワーは、二輪車向けの始動用蓄電池として利用できるリチウムイオン蓄電池を開発、販売している実績を持っている。この実績で蓄積した技術を活用して、蓄電池の基本設計と開発を担当する。宇部興産は、リチウムイオン蓄電池の電解液とセパレータを開発販売しており、今回は引火点が高く高温に耐えられる電解液を開発する。
図 エリーパワーが販売している二輪車始動用リチウムイオン蓄電池
出所 エリーパワー
3社は、12Vの始動用リチウムイオン蓄電池を開発した後に、ハイブリッド車の電源などにも利用できる24V品や48V品の開発を検討している。