IHIは2018年5月16日、アンモニアでSOFC(Solid Oxide Fuel Cell:固体酸化物形燃料電池)システムを駆動し、発電に成功したと発表した。同社が開発した試作機が2018年3月に発電に成功し、その発電出力は1kW級に達したという。
図 アンモニアで動作させたSOFCシステムの試作機
出所 IHI
既存のSOFCシステムは都市ガスで動作するものが多いが、都市ガスから水素を取り出す改質器が必要になる。そして炭素を含む都市ガスでSOFCを動作させると、少量とはいえCO2が発生する点も課題となっている。
今回IHIが開発したSOFCシステムは、SOFC動作時の高温(700~900℃)でアンモニア(NH3)を水素(H2)と窒素(N2)に分解できるという特性を活用したもの。改質器を設置する必要もなく、アンモニアをSOFCセルに直接供給すれば発電する単純な構成が特徴だ。動作時にCO2が発生することもない。
図 アンモニアをSOFCセルの燃料極に供給すると、高熱で水素と窒素に分解できる
出所 IHI
アンモニアは水素含有量が多いため、水素を輸送する手段として注目を集めている。すでに肥料や化学原料として流通しており、物流網が整っていることからも、水素輸送の手段として有望と考えられている。
IHIは今後、開発したシステムの長時間連続運転に挑戦し、システムの大型化や効率向上に取り組む。その後は、業務産業用途に向けた実用化を目指す方針を示している。
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IHI