携帯電話番号の枯渇とM2M/IoT専用番号の需要増加
総務省によると、携帯電話の契約数は、2015年3月末時点で、1億5,270万件に到達している。携帯電話番号は、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの各通信事業者が、契約数の増加などを見込んで総務省に指定申請し、総務省から各通信事業者に割り当てられる仕組みとなっている。2015年3月末時点で、総務省が電気通信事業者に指定可能な「090」「080」番号帯はすべて指定済みとなっており、続く「070」番号帯についても、今後、指定可能な番号は残り4,420万番号となっている。
携帯電話の契約数は、毎年約800万件の増加傾向にあり、このペースで需要が増大した場合は、平成30(2018)年には「070」番号帯が不足(枯渇)することが懸念されている(図1)。
図1 携帯電話/PHSの指定可能電話番号数の推移)
〔出所 総務省 情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信番号政策委員会 第14回配布資料より〕
さらに、2016年4月1日からスタートする電力小売全面自由化に向けて、各電力事業者が設置を進めているスマートメーターは、スマートメーターと電力会社のMDMS(メーターデータ管理システム)との通信において、一部では3GやLTEなどのモバイルネットワークの利用も行われる。また、さまざまなセンサーから取得した情報をモバイルネットワークを介して送受信し、利用するM2M/IoTサービスが実践時代を迎えているため、新たな携帯電話番号に対する需要が急増している。
このような背景から、情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信番号政策委員会(主査:東京工業大学名誉教授・放送大学特任教授 酒井善則氏)では、M2M/IoT時代に即した携帯電話番号割り振りの制度について、2015年6月から検討が開始されたのである。
電気通信番号の使用状況
次に、現在の電気通信番号の使用状況を表1に示す。前述した通り、現在、携帯電話/PHSについては、「090」「080」「070」の番号帯が使用されている。また、「010」番号帯は国際電話に、「050」番号帯についてはIP電話に割り当てられている。
表1 電気通信番号の使用状況(2015年3月末現在)
〔出所 総務省 情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信番号政策委員会 第14回配布資料より〕
このほかの番号帯として、「020」番号帯は、発信者課金のポケベル電話番号として020-【4】(1~3、5~9を除く「4」だけという意味)から始まる1,000万件はすでに一部が指定されているが、残りの8,000万件(1~3、5~9のいずれかを使用)は未指定となっている。また、「060」番号帯は、UPT/FMCサービス注1の用途が定められており、NTTコミュニケーションズがサービスを提供していたUPTサービスである「eコールサービス」に利用されていたが、同サービスが2011年 3月31日に終了したため、現在は未使用となっている。さらに、「030」「040」番号帯も未指定である。
M2Mに利用される携帯電話番号の需要
このような状況のなかで、M2Mに利用される携帯電話番号の需要は、平成32(2020)年に約4,200万番号になると予想されている(図2)。その需要の内訳については、表2の通りとなっており、「テレマティクス」が約1,200万番号と突出して多く、「スマートメーター」が480万番号、「農業センサーによる状態監視」が約465万番号、子供の位置情報通知などのサービスが約420万番号と続いている。
表2 M2Mに利用される携帯電話番号の需要内訳〔平成32(2020)年予測値〕
〔出所 総務省 情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信番号政策委員会 第14回配布資料より、出典 「固定電話の番号区画等に関する調査研究 報告書」 (平成27年3月 NTTアドバンステクノロジ株式会社)より作成〕
図2 M2Mに利用される携帯電話番号の需要予測
▼ 注1
UPT:Universal Personal Telecommunication、自宅の電話や携帯電話など、任意の固定網/移動体網を意識することなく1つの任意の番号で発着信できるサービス。
FMC:Fixed-Mobile Con-vergence 、移動体通信と有線通信とを組み合わせた電気通信サービス。例えば、1つの電話番号で、家庭の固定電話や携帯電話など、契約した端末で着信を可能にする通信サービス。