ロームと日新システムズは2016年11月14日、無線通信規格「Wi-SUN FAN(Field Area Network)」の通信実験に成功したと発表した。この実験は、京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究チームと共同で実施したもの。
Wi-SUN FANは、2016年5月に規格のバージョン1が制定されたばかりの新しい無線通信規格。IoTのセンサー機器の中でも、スマートメーターや道路交通システムなど、屋外で遠距離通信をする機器に向けたものだ。
Wi-SUNを利用する通信規格としては、家電製品とHEMSなど、住宅内の通信に向けたWi-SUN HAN(Home Area Network)がある。2015年1月に策定されたものだ。Wi-SUN HANもWi-SUN FANも、通信の物理層にIEEE802.15.4gを使うなど、共通する部分は多い。最大の違いは、通信の中継回数にある。Wi-SUN HANは、通信の範囲として住宅内を想定しているため、中継通信(ホップ)は1台の中継器を介したものだけが可能になっている。
一方、Wi-SUN FANは屋外で遠距離までデータを伝送することを想定しており、対応機器を介して複数回の中継通信(マルチホップ)が可能になっている。また、通信相手の認証方式にWi-SUN HANでは「PANA(Protocol for carrying Authentication for Network Access」を利用するのに対し、Wi-SUN FANでは無線LANと同じ「IEEE802.11x」を使う。
図 Wi-SUN FANは何回も通信を中継することで、データを遠隔地に届けることができる
出所 ローム
今回の実験では、ロームが開発した通信モジュールで、日新システムズが開発したデバイスドライバやプロトコルスタックなどのソフトウェアを動作させた。原田教授の研究チームは、日新システムズと共同でソフトウェアの開発を担当した。
図 実験のために試作した端末(左)とアクセスポイント(右)
出所 ローム
実際の通信では、1つの端末と複数のアクセスポイントを使って、中継通信(マルチホップ通信)ができることと、IP(Internet Protocol)通信ができることを確認した。
図 マルチホップ通信の実験の様子
出所 ローム
なお、今回の実験は内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として実施したもの。ローム、日新システムズ、京都大学原田研究室は今後、Wi-SUNアライアンスが主催するWi-SUN FANの相互接続製仕様を検証するイベントに参加し、Wi-SUN FANの技術適合性と相互接続性の仕様作成に協力していく。また、今回の実験で使用した機器を仕様に完全準拠したものにするために開発も進める。工場の制御機器や医療用機器に接続して、超ビッグデータを作り出す実験も予定している。