電通国際情報サービスは2016年12月22日、センサーを利用したバス安全運転支援システムを開発したと発表した。大阪電気通信大学、京都産業大学、京都大学、株式会社社会システム総合研究所、みなと観光バスと共同で開発し、2016年12月から2017年1月にかけて、営業稼働するバス30台に必要な機器を設置してシステムの実証実験を実施する。
このシステムの最大の特徴は、位置情報、加速度、車速などといった車両の状況を検知するセンサーだけでなく、運転手の心拍数や呼吸状態を検知するセンサーも活用する点にある。近年多発する長距離バスの事故は、ほとんどが運転手の健康問題が原因になっている。激烈な料金競争の中で、過密なスケジュールで長時間運転を強いられることで、健康を損ね、事故を起こしてしまっている。このような現状を考えると、運転手の健康状態までセンサーでつかもうという今回の試みは意義あるものと言えるだろう。
車両に取り付けたセンサーで得るデータは、車両の位置情報、加速度、車速、エンジン回転数、累計走行距離、ブレーキの操作状況、冷却水の温度など。これに加えて運転席の背面に設置したセンサーで運転手の心拍数や呼吸状態を検知する。
各センサーで取得したデータは、道路の車線数や歩道整備の状況、勾配、道路縦断線形などの道路情報を付け加えて、クラウド上のサーバーに蓄積していく。走行中は、リアルタイムで検知したデータと、過去にその地点で取得し、蓄積してきたデータと比較、解析する。こうして過去の運転状況と比較することで、事故発生率が高い地点など、安全確保に必要な情報を導き出す。
図 センサーが検知したデータはLTEでクラウドに送信する
出所 電通国際情報サービス
クラウドだけでなく、「エッジコンピューティング」も活用していることも特徴と言える。センサーデータの蓄積と、リアルタイムデータとの比較分析などの処理にはクラウドを利用し、緊急時に警告を出すなど遅延が許されない状況では、車両に搭載したコンピュータ「isaaxブリッジ」がクラウドと連携することなく処理する。
図 車両に搭載する「isaaxブリッジ」。センサーデータを集めてクラウドに送信するほか、緊急時の警告を出すなどの機能を持つ
出所 電通国際情報サービス
実証実験はみなと観光バスが運行する30台の路線バスを対象に実施する。走行地域は神戸市周辺で、合計で6万キロ以上走行してデータを集める。