中部電力は2018年5月17日、長野県の天竜川水系にある黒川(くろかわ)と小黒川(こぐろかわ)の流水を利用した「清内路(せいないじ)水力発電所」の建設を開始した。2022年6月に運転を開始する予定。河川の流れを止めない「流れ込み式」の発電所となる。
図 清内路水力発電所の所在地
出所 中部電力
黒川と小黒川の上流にそれぞれ「えん堤」を作り、えん堤の手前から導水路を引いて発電所まで流す。えん堤を超える水流を下流に流し、えん堤で止まった水流を利用するわけだ。導水路は上図のように山地にトンネルを通して川の流れとは別のルートで作る。
図 黒川流域に建設するえん堤のイメージ
出所 中部電力
導水路の出口と発電所にはおよそ273mの高低差があり、導水路から出てきた水を勢い良く落として発電所の水車を回して発電する仕組みだ。発電所には1秒間に最大で2.5m3の水が流れ込むという。
発電所の最大出力はおよそ5.6MW(5600kW)。中部電力は年間発電量を、およそ29GWh(約2900万kWh)と見積もっている。一般家庭の年間電力消費量に換算すると、およそ8800世帯分に相当する。発電所の出力と想定発電量から設備利用率を計算すると、約59%となる。
中部電力はダムの「維持流量」を利用した水力発電所を新設するなど、水力発電の開発に積極的に取り組んでいる(関連記事)。2019年度には、静岡県の安倍川流域に流れ込み式発電所をもう1件新設する計画を公開している(関連記事)。燃料を必要としないため、CO2排出量削減効果を期待できるからだ。今回建設する清内路水力発電所は、運転を開始すると年間でおよそ1万3000トンのCO2排出量削減効果が得られる見込みだという。また設備利用率が高くなるため、小規模な発電所でも安定した発電量を期待できるという理由も大きい。
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中部電力