次世代電力システムの2つの心臓部
2020年4月の発送電の法的分離により、当面の目標であった電力システム改革が終了した。
2020年6月、近年頻発する自然災害や再エネの主力電源化などに対して、災害時の迅速な復旧や送配電網への投資や、再エネの導入拡大などを図るため、「エネルギー供給強靭化法」注1(後出の図3参照)が国会で成立した(2022年4月に施行)。
これに伴って、新たにFIP制度や特定計量注2制度など、次世代電力システムの心臓部ともいうべき、次の新しい制度が注目されている。
- 1つは、「次世代スマートメーター制度検討会」が再開したこと。
- もう1つは、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」が設立されたこと。これは電気計量制度の合理化、すなわち、計量法の検定を受けていなくても、一定の基準を満たしたメーターを活用して計量できるようにする制度である。
次に、この2つの委員会について、順次解説していこう。
「次世代スマートメーター制度検討会」の再開
経済産業省 資源エネルギー庁は、2020年9月8日、新たなスマートメーターの仕様策定に向けた「次世代スマートメーター制度検討会」を再開した(図1)。
図1 次世代スマートメーター仕様のイメージ
FAN:Field Area Network、複数の家庭からのスマートメーターのデーターを、コンセントレーター(集約装置:複数の回線を束ねる装置)まで届ける地域通信網
HES:Head End System、スマートメーターおよび集約装置(コンセントレーター)等の通信制御を行うシステム
MDMS:Meter Data Management System、メーターデータ管理システム
託送業務システム:家庭で使用した電力量の検針日までの累計値を示すスマートメーターの「指示数」を、ネットワーク経由(上図のコンセントレーター~MDMS経由)で30分ごとに収集する機能をもつ。さらに、前回取り込んだ指示数を、今回の指示数から差し引いて使用電力量の「30分値」を算出して、家庭(需要家)ごとに仕分けし、小売電気事業者等に提供する機能も備えている。
出所 資源エネルギー庁、「次世代スマートメーターに係る検討について」(2020年9月8日)をもとに加筆修正
現在、日本全国で設置・導入されているスマートメーターは、2010〜2014年に開催されたスマートメーター制度検討会で仕様が決められ、2014年から本格導入が開始されたものである注3。
スマートメーターの検定期間は計量法で10年と規定されているため、2014年から10年後の2024年から順次、新しいメーターへの交換が始まる。
今後FIP制度やVPPのビジネス化、あるいはマイクログリッド運用の基盤として、さらに電気計量制度の合理化なども背景に、電力ビジネスの将来を見据えて、次世代スマートメーターの仕様策定のための制度検討会が再開された。
具体的には、図1に示すように、30分間隔の計量頻度の見直し、通信仕様の見直し、Bルート(宅内通信)のあり方の検討、ガス・水道との共同検針の推進、サイバーセキュリティ、データプラットフォームなど、大幅な見直しが行われる予定となっている。
2024年度から順次導入できるよう、2020年度中に、次世代スマートメーターの基本仕様の方向性を取りまとめる。
▼ 注1
エネルギー供給強靱化法:正式名称は「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」。2020年6月5日に国会で可決施行日は2022年4月1日に施行される。(1)電気事業法の改正(2)再エネ特措法(FIT法)の改正、(3)JOGMEC法の改正、3つの法律改正の内容を束ねた法律となっている。詳細は、本誌2020年9月号の特集「スマートレジリエンスネットワークとは?」を参照。
強靱化とは英語でResilience(レジリエンス)。「災害に強い」という意味で、回復力や復元力といわれる場合もある。
▼ 注2
電気計量制度の合理化を図る措置。すなわち、計量法の検定を受けていなくても、一定の基準を満たしたメーターを活用して計量できるようにすること。
▼ 注3
2020年3月末現在で、6,105万台が設置済み。現行スマートメーターの計測データは、小売電気事業者が電気を販売する際の「30分値計画値同時同量制度」や「インバランス料金の精算」など、電力事業の基盤として活用されている。