[クローズアップ]

新しい「特定計量制度」へのロードマップ

― プロシューマー時代に向けて2022年度に運用開始へ ―
2020/11/07
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」の設立

 次に、2020年6月に成立した「エネルギー供給強靱化法」で規定された「特定計量制度」については、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」が設立され、2020年9月4日、その第1回会合が開催され、今後、詳細な設計を進めていく。

〔1〕「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」の活動内容

 すでに、2019年度に「特定電気取引に関する計量課題研究会」において、新たな電気計量ニーズに対応する「特定電気取引」の範囲や、当該取引の計量ニーズに応える柔軟な電気計量の在り方について検討が行われ、「論点整理報告書」注4がまとめられた。

 これらを踏まえて、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」では、今後、持続可能な電力システム構築小委員会(構築小委)注5から提示された論点について、詳細な検討を行うことになった。

 具体的には、次のような内容である。

  1. 特定計量の定義・要件や事業者が従うべき特定計量に用いる計量器(以下、特例計量器)に関する技術基準や、特定計量を行う人に関する運用基準などを策定するための詳細検討、および省令等で定めるべき事項についての整理。
  2. (1)の詳細解釈などを示したガイドラインや措置命令基準、事業者の届出内容とすべき事項等についての整理。
  3. 発電量と逆潮流量の差分値、あるいは総発電量とEVへの充電量などの差分値(後出の図5を参照)による取引に対するニーズの高まりも踏まえ、特定計量のような特例制度での制度的措置に限らず、電気計量制度一般のルールの見直しも含めて検討し、実施条件などについての取りまとめ。

〔2〕「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」の構成と今後のロードマップ

 「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」は、学識経験者、認証・試験機関、機器製造事業者、取引者(サービス事業者等)、消費者団体、行政機関、事務局などのメンバーで構成される。

 具体的な基準などを検討するため、ワーキンググループ(WG)を設置し、ここでは、計量機器の構造要件や試験方法などの各論点の詳細を議論し、委員会で検討するための基準案やガイドライン案などの素案を作成する。

 なお、図2に示すように、特定計量制度は、2022年4月1日の施行が予定されている。このため、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」では、次のことを進めていく。

  1. 2020年内に、定義・要件や事業者が従うべき基準(省令で定めるべき事項)などの素案の作成。
  2. (1)の素案を踏まえて、2020年度内に、詳細解釈などを示したガイドラインなどの取りまとめ。

電気計量制度の合理化の背景

表1 計量法の検定を受けていない計量器の想定される精度(誤差)の例

表1 計量法の検定を受けていない計量器の想定される精度(誤差)の例

※日本電気計器検定所作成
出所 資源エネルギー庁「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」、2020年9月4日

〔1〕エネルギー供給強靭化法に「特定計量」を明記

 ここで、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」が設立された背景についてなどを、簡単に見ていく注6

 2020年6月に国会で成立した「エネルギー供給強靭化法」の改正事項の中に、分散型リソースの活用促進に向けた環境整備として、「電気計量制度の合理化を図る措置」(以下、特定計量という)が盛り込まれた。

 具体的には、図3の改正のポイント「(3)災害に強い分散型電力システム」の項に示す、「④家庭用蓄電池等の分散型電源等をさらに活用するため計量法の規制を合理化」することである。

 同強靭化法では、この制度を合理化し、計量法の検定などを適用除外とする規定が明記された。すなわち、計量器の精度(表1参照)や消費者保護の確保など一定基準を満たしていれば、計量法の検定を受けていない計量器でも活用できることになるのである。

図3 エネルギー供給強靱化法※における主な改正のポイント

図3 エネルギー供給強靱化法※における主な改正のポイント

※エネルギー供給強靱化法:電気事業法、再エネ特措法、JAGMEC法の3つの法律改正を束ねた法律。
出所 資源エネルギー庁、「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」、2020年9月4日

〔2〕分散型リソースの拡大

 この背景には、太陽光発電や風力発電など再エネの主力電源化が進展し、家庭においては、家庭用蓄電池や電気自動車(EV)などの分散リソースが、急速に普及しつつあることが挙げられる。

 さらに、これらの分散リソースを束ねて活用するVPP構築実証事業(2020年度が最終年度)に続いて、EV充電時のダイナミックプライシング(時間別料金)実証事業なども開始されている(2020年度〜2022年度)。

 このため、今後、電気の発電者(Producer)でもあり消費者(Consumer)でもある「プロシューマー」(例:太陽光発電を設置し売電も行う家庭)の増加が予想されてしていることから、これに伴う新しい電力取引のビジネスへの期待が大きくなってきている。

 計量法の規制を合理化した新しい特定計量制度のもとでは、図4に示すように、計量法の検定を受けなくても、一定基準を満たしたメーターを活用できるようになる。

図4 計量法に基づく従来の特定計量器と計量法の検定を受けない新メーターの活用の例

図4 計量法に基づく従来の特定計量器と計量法の検定を受けない新メーターの活用の例

出所 資源エネルギー庁、『「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ㈬次世代の電力プラットフォームもにらんだ法改正』(2020年10月2日)をもとに一部修正加筆


▼ 注4
特定電気取引に関する計量課題研究会の「論点整理報告書」(2020年3月)

▼ 注5
持続可能な電力システム構築小委員会、「特定計量制度の論点について」、2020年9月4日事務局、
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/keiryo_seido/pdf/001_04_00.pdf
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/#system_kouchiku

▼ 注6
「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」の第1回会合、「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」の資料を参照。

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