[クローズアップ]

新しい「特定計量制度」へのロードマップ

― プロシューマー時代に向けて2022年度に運用開始へ ―
2020/11/07
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

新しく台頭しているプロシューマーのインパクト

〔1〕新たな電力取引を見据えた電気計量への合理化

 電力市場の急速なパラダイムシフトの中で、これまでひたすら電力の需要家であった消費者(家庭)が、自らも太陽光発電などで発電も行い、電気を売買するプロシューマー化となり始めている。

 新たに台頭しているプロシューマーは、自身が保有する太陽光発電や家庭用蓄電池、電気自動車(EV)などを利用して、新たな電力取引ビジネスを行うことへ期待を高めている。

 このような電力取引に必要となる電気の計量について、例えば太陽光発電などのエネルギー資源(リソース)に付随しているパワーコンディショナー(PCS)や、EVの充放電設備(EVPS:EV Power Station)などの電気計量への合理化が求められてる。

〔2〕特定計量制度の動向

 このような動きを捉えて、すでに2019年11月8日には、持続可能な電力システム構築小委員会が設立され、電気計量制度の合理化に向けて審議が行われている注7

 ここで、特定計量制度についての動向は次のようなものである。

 現行の電気計量制度では、電力量の取引に関する計量については、計量法に基づく型式承認(後述の〔3〕参照)または検定を受けた計量器を使用することが基本となっている。

 これに対して、前述したプロシューマーなどが期待する電力取引について、以下の内容が改善案として提起された。

  1. 計量専用機器ではない、PCSやEVPSなどの多様な機器や設備(に付随する計量器)ごとに、それぞれ現行の型式承認などを実施することは、再エネを普及させる面からも現実的ではない。
  2. 既存の機器が適切な計量機能をもっている場合に、追加的に検定済みの計量器を設置することも合理的ではない。

〔3〕形式承認とは

 ここで簡単に形式承認について説明しておこう。

 取引等で使用される計量器(特定計量器)注8は、その構造や性能に一定の基準が定められている。

 この基準は、計量法の特定計量器検定検査規則(検則)で規定されており、30項目以上の構造に関する試験と器差(誤差)試験がある。しかし、このような試験は長時間を要するためすべての計器に行うことは物理的に不可能である。

 そこで、個々の計器を検定する前段階で、その型式の代表計器に対して構造に関する試験を日本電気計器検定所が行い、合格した計器に対して「型式承認」を与える。

 型式承認された計器には、型式承認番号を付すことによって、検定に際して構造検定を省略できるようにしている。

具体例で見る新しい特定計量の使用イメージ

 ここでは、プロシューマー宅における、具体的な例を挙げて、特定計量のイメージを紹介しよう。

〔1〕発電量と逆潮流量の差分値を算出

 図5の左図は、自宅の屋上に設置されたY社の太陽光発電(第三者が所有)に関して、

  1. Y社の太陽光発電で発電した発電量をパワーコンディショナーで測定し(図中のⒶ)、
  2. 契約しているX社(小売電気事業者)へ、宅内の分電盤からスマートメーターを経由して売電(逆潮流量Ⓑ)する

ケースである(例:太陽光発電の買電価格は例えば20円/kWhとする)。

図5 発電量と逆潮流の差分計量についての検討の背景

図5 発電量と逆潮流の差分計量についての検討の背景

出所 資源エネルギー庁、「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」(2020年9月4日)もとに加筆修正

 つまり、この図5の左図は、「発電量(Ⓐ)−逆潮流量Ⓑ」という差分(kWh)を計算し、自家消費した電力量をY社と取引したいというケースを示した例である。

〔2〕総受電量とEV充電量の差分値を算出

 図5の右図は、

  1. X社という小売電気事業者(系統からの買電価格:25円/kWh)からスマートメーター経由で受電した総受電量(Ⓐ)を、宅内の分電盤を経由し、
  2. 「総受電量(Ⓐ)−EVへの充電量Ⓑ」の差分を、家庭内の消費量として算出する

ケースである(EVへの充電価格は、ダイナミックプライシングにより、昼間は26円/kWh、夜間は10円/kWh)。

 以上のような差分計量の実施については、さまざまな検討課題もある。

 そのため、差分計量の実施条件については、特定計量の制度検討と連携しつつ、特定計量のような特例制度での制度的措置に限らず、電気計量制度一般のルールの見直しも含めて検討されている。


▼ 注7
持続可能な電力システム構築小委員会(第2回)資料1、資源エネルギー庁「電力システムのレジリエンス強化に向けた論点」、令和元(2019)年11月20日

▼ 注8
特定計量器:計量器のうち国民の生活に関係の深いものを国が特定計量器として指定。特定計量器の使用者がこれを取引などに用いる場合、国や自治体等が精度を確認した計量器を使用することを義務づけることで、正確な計量を確保する。
https://www.meti.go.jp/shingikai/keiryogyoseishin/pdf/h28_01_02_01.pdf
特定計量器の例としては、タクシーメーター、水道メーター、電力量計、温度計など18種類が規定されている。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/12_gaiyou_keir...

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