レーザー施工のためのシステムを小型化/高出力化し作業を効率化
古河電気工業株式会社(以下、古河電工)は、船舶や電車、橋梁などの大型インフラ設備の鋼材表面の錆びや劣化した塗膜をレーザーで表面処理し、産業廃棄物の排出量を低減する小型可搬システムの受注を、2025年5月23日に開始する。同社の従来製品と比べ、本体の小型化とレーザーの高出力化により、インフラ構造物の塗膜・錆の除去作業の効率化につなげるという。
図1 「インフラレーザ」小型可搬システム
出所 古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月13日、「可搬性に優れた「インフラレーザ」小型可搬システムを製品化」
図2 小型可搬システム(左)と従来製品(右)のサイズの比較
出所 古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月13日、「可搬性に優れた「インフラレーザ」小型可搬システムを製品化」
古河電工は、光源に連続波方式のファイバレーザを適用し、独自の光学技術によって鋼材にダメージを与えず、1種ケレン注1に相当する塗膜・錆を除去する、インフラ構造物向け表面処理ソリューション「インフラレーザ」シリーズを提供している。レーザーによる塗膜・錆の除去は、従来のブラスト工法注2と比べ、産業廃棄物の排出量が極めて少なく、環境負荷を低減できるという。2024年には、鉄道メンテナンスに特化した手持式レーザヘッドを備えた小型レーザ施工システム(以下、小型定置システム)の提供を開始した。
小型可搬システムは、インフラレーザシリーズの新製品であり、水冷式冷却を採用した小型定置システムと比べ、空冷式冷却を採用することで本体重量を55kgと約1/5に軽減した。本体にキャスタが搭載されており、屋内外の作業場所へ容易に持ち運べるほか、レーザ施工を移動しながら行える。光出力は、従来製品の700Wから1000Wと高くなっており、レーザ施工の速度が約1.5倍になったという。
図3 小型可搬システムを使った作業のイメージ
出所 古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月13日、「可搬性に優れた「インフラレーザ」小型可搬システムを製品化」
図4 小型可搬システムと小型定置システムの比較
出所 古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月13日、「可搬性に優れた「インフラレーザ」小型可搬システムを製品化」
今後は表面処理の高速化とラインアップ拡充へ
インフラ構造物のメンテナンス現場では、劣化した塗装や錆の除去にサンドブラストや剥離剤、機械工具などが広く用いられている。しかし、これらの手法は処理時に大量の産業廃棄物が発生したり、作業者に大きな負担をかけたりするといった課題があった。こうした背景から、クリーンで作業負担の少ないレーザ表面処理技術への注目度が高まっているという。
また、小型定置システムの発売以降、鉄道、船舶、電力、タンク、橋梁、工場などの業界から、屋内外を自由に移動でき、さらなる小型化と施工速度の向上を実現したシステムに対する要望があったという。
今後、同社は、インフラレーザシリーズで表面処理のさらなる高速化とラインアップの拡充を進める方針だという。
注1:ケレン:錆や古い塗料などの汚れを落とすこと。1種から4種のグレードがあり、1種ケレンはブラスト法により錆や塗膜を完全に除去する。
注2:ブラスト工法:研削材を対象物表面にぶつけて加工を行う表面処理方法。
参考サイト
古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月13日、「可搬性に優れた「インフラレーザ」小型可搬システムを製品化」
古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2023年10月23日、「鉄道メンテナンスに最適な小型レーザ施工システムを製品化」
古河電気工業株式会社 ニュースリリース 2022年11月30日、「インフラ構造物向け表面処理ソリューション事業の新ブランド「インフラレー」を立ち上げ」