カーボンニュートラル/脱炭素
[ニュース]

京急電鉄が「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を改定

GHG排出量を2035年度に70%削減に引き上げ、脱炭素を加速!
2025/07/11
(金)

新たなロードマップも策定し公開へ

 京浜急行電鉄株式会社(以下、京急電鉄)は、グループの温室効果ガス(以下、GHG注1)排出削減が想定を上回るペースで進んでいることを踏まえ、2022年度に策定した長期環境目標「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」の中間目標値を改定した。
 GHG排出に関して、従来の「2030年度に2019年度比30%削減」の方針を、「2035年度に同70%削減」へと大幅に引き上げた。これは日本政府の中期目標(2030年までに2013年度比46%削減)や、気候変動に関する国際基準であるIPCC注2の目標(2030年までに2010年比45%削減)をも上回る水準となる。
 また、今回の中間目標見直しの根拠となった同社グループのGHG排出量の推移(表1)や、新たな削減目標に基づくロードマップ(図1)も策定し、公開している。

表1 京急電鉄グループのGHG排出量の推移

※2024年度実績については、第三者保証を取得のうえ、2025年9月頃公表予定。
出所 京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年6月27日、「GHG排出量 2035年度に2019年度比70%削減を目指し、脱炭素への取り組みを加速させます」

図1 新たに策定された「京急グループ2050年カーボンニュートラル」へのロードマップ

出所 京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年6月27日、「GHG排出量 2035年度に2019年度比70%削減を目指し、脱炭素への取り組みを加速させます」

鉄道事業分野では再エネ化により続々とCO2排出ゼロへ

 今回の目標見直しの背景には、鉄道事業の脱炭素化の大きな流れがある。京急電鉄ではすでに2024年度から全線(総延長約87km)で列車運行に使う電力を100%再エネに切り替えた。これによってGHG排出量の削減が大きく進展し、今回の上方修正につながった。
 他の鉄道事業会社でも同様に、東急電鉄株式会社が2022年4月から、西武鉄道株式会社が2024年1月から、鉄道運行に必要な電力を再エネ由来の電力に切り替えてCO2排出を実質ゼロとしているほか、阪神電気鉄道株式会社でも2026年度からの導入を目指している。
 また、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)やJR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)も、一部路線などで同様の取り組みを進めている。
 もともと鉄道は、旅客・貨物輸送の際の単位あたりCO2排出量が自動車や航空機などよりも圧倒的に少ない。再エネ化によって環境への貢献はもちろんのこと、鉄道の事業価値のさらなる向上も期待できる。

東京ガスと共同で新会社を設立、エリア全体の脱炭素化を目指す 

 京急電鉄は、鉄道事業以外の脱炭素化についても取り組んでいる。
 2025年7月1日、東京ガス株式会社(以下、東京ガス)と共同で新会社「京急TGエナジーコネクト株式会社」を設立した。
   同社は「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」(図2)においてエネルギー供給を担う。災害時でも供給継続が容易な「中圧ガス」注3を導入し、停電時にも稼働できるガスコージェネレーションシステム注4によって、発電時の排熱も活用した高効率なエネルギー供給を行う。これにより、エリア全体の脱炭素化とレジリエンス注5強化を目指す。
   この建設計画は羽田空港が至近にあり、将来はリニア中央新幹線の起点となる東京・品川エリアの大規模再開発プロジェクトの1つとなっている。「西地区A地区」は、京急電鉄を主体に2025年5月に着工し2029年に竣工予定。開業時には共同開発事業者であるトヨタ自動車株式会社の「新東京本社」が入居する。

図2 「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」概要
(1)A地区新築計画の外観イメージ(東京・品川)

(2)A地区新築計画の敷地(緑色部分:東京・品川)

出所 京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年5月26日、「『京急品川開発プロジェクト』本格始動」


注1:GHG:Greenhouse Gas、温室効果ガス。大気中にある熱(赤外線)を吸収する性質をもつガスのこと。GHGには、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスなどがある。CO2の比率が多いところからGHGのことをCO2と呼ぶ場合もある。
注2:IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された、気候変動に関する科学的な評価を行う国際的な組織。2025年6月時点で195の国と地域が参加。ここでまとめられた報告書は各国政府の気候変動政策の基礎情報として利用されている。
注3:中圧ガス:都市ガスを家庭や工場等に送るガス導管には、「高圧」「中圧」「低圧」の3種類があり、このうち、高圧と中圧のガス導管は、地震発生時に被害を受けにくいように設計されている。
注4:ガスコージェネレーションシステム:Gas Cogeneration Systems(CGS)、ガス熱電併給システム。都市ガスで発電した際に発生する廃熱を冷暖房等に有効利用する分散型エネルギーシステム。
注5:レジリエンス:災害時における回復力、復元力などを指す。

参考サイト

京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年06月27日、「GHG排出量 2035年度に2019年度比70%削減を目指し、脱炭素への取り組みを加速させます」

京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年06月27日、「京急 TG エナジーコネクト株式会社の設立について」

東京ガス株式会社 プレスリリース 2025年6月27日、「京急TGエナジーコネクト株式会社の設立について」

京浜急行電鉄株式会社 Webサイト「環境のために」

京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2024年1月30日、「京急線は全線100%再生可能エネルギー由来の電力で運行!」

京浜急行電鉄株式会社 ニュースリリース 2025年5月26日、「『京急品川開発プロジェクト』本格始動」

トヨタ自動車株式会社 ニュースルーム 2025年05月26日、「品川・新東京本社の2029年度開業に向け着工」

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