[特集]

Q&Aで学ぶH.264/AVC(6):ハイビジョンでも使われる「色差信号」とは?

2008/03/17
(月)
大久保 榮

[2]「R,G,B」から「Y,Cb,Cr」への変換

そこで、この12MHzの帯域をより少ない帯域に圧縮するため、ビデオ・カメラ内で少し複雑ですが次の式によって、「R,G,B信号」から等価な「Y(輝度信号),Cb(色差信号),Cr(色差信号)」に変換します。等価という意味は、Y,Cb,Crが与えられると、元のR,G,Bを再現できるということです。

Y(輝度信号)=0.299R(赤)+0.587G(緑)+0.114B(青)
Cb(色差信号)=-0.169R(赤)-0.331G(緑)+0.500B(青)
Cr(色差信号)=0.500R(赤)-0.419G(緑)-0.081B(青)

ここで、輝度信号Yは、画面の「明るさ」を表す成分で、その値は0~1の範囲に入ります。白黒テレビの信号と同一です。人間の目は、輝度信号Yに対して敏感であり解像度が高いので、すべての画素値が使用されます。一方、色差信号Cb、Crは、「色の強さや種類」を表す成分です。CbはB-Yに0.564を掛け、CrはR-Yに0.713を掛けて得られます。これはCb、Crの値が-0.5~+0.5の範囲になるように選ばれています。人間の目は、色差信号(Cb、Cr)に対しては鈍感であり解像度が低いため、色差信号は、輝度信号Yに比べて半分程度の画素数に落としても人間の目にはその差がわかりません。

このようなことから、Yの標本化周波数を4とすると、Cbは2、Crも2というように半分程度にしても画質を損なうことはありません。

なお、色差信号については、さらに1画面あたりのライン数も半分にしても実用に耐えることがわかっています。

[3]12MHzから6MHzへの帯域圧縮

これを周波数的に見ると、輝度信号Yには4MHzの帯域を必要とするのに対し、色差信号Cb、Crにはそれぞれ1MHz程度の帯域(計6MHz=4MHz+1MHz+1MHz)で十分となります。すなわち、カラー・テレビ信号(画素)をR,G,B(光の3原色)からY(明るさ),Cb(色の強さ),Cr(色の強さ)成分に変換することによって、アナログ信号において12MHzから6MHzへと帯域圧縮が図られています(図1-7)。


図1-7 光の3原色R,G,BとY,Cb,Crの関係(クリックで拡大)

以上のような理由から、帯域幅(12MHz)が大きいカラー・テレビ信号R,G,Bと同じ効果を画面に表現でき、しかもより少ない帯域幅(6MHz)で済む「Y」、「B-Y」(青信号からYを引いた信号)、「R-Y」(赤信号からYを引いた信号)が使用されるようになったのです。このように、色信号から輝度信号Yの引き算を行う形式であるため「色差信号」と言います。

ハイビジョンで直接扱われる信号(注:ただし、ディスプレイはRGB表示する)やDVDに記録されている信号も、R,G,BではなくY,Cb,Crの信号なのです。

※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:最新の情報圧縮技術〔H.264/AVC〕編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 H.264/AVC教科書」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。

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