このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
ブロードバンド時代の急速な進展を背景に、通信と放送の融合が注目され、本格的な画像コミュニケーション時代が到来しています。このような時代の要請に対応して、新しい「H.264/AVC」という画像圧縮技術が標準化され、国際的な注目を集めています。今回は、H.264/AVCでも使われている「ハイブリッド符号化」について解説します。


Q8:「ハイブリッド符号化」とは?
H.264/AVCなどの、現代の画像圧縮符号化が利用する、「動き補償フレーム(画面)間予測」と「DCT」に「エントロピー符号化」を組み合わせた「ハイブリッド符号化」について詳しく説明してください。
≪1≫ハイブリッド符号化の仕組み
「ハイブリッド符号化」とは、「動き補償フレーム(画面)間予測」と「DCT」に「エントロピー符号化」を組み合わせた画像圧縮符号化の技術です。図1-10に示すように、ハイブリッド(混成)符号化では、基本的に、
①画面間の冗長情報の削減(時間的な冗長度の削減とも言う)
②画面内(空間的とも言う)の画素そのものがもつ冗長情報の削減(空間的冗長度の削減とも言う)
の両方を組み合わせて圧縮符号化します。
(1)まず、図1-10の①に示すように、時間軸方向に流れる動画像の各画面間は似たような画面の連続なため、各画面にはわずかな差しかない、すなわち強い相関関係があるのでこれを利用して画面間の差分だけを送り、冗長な情報を削減し圧縮します。この場合は、前述した動き補償フレーム(画面)間予測によって、画像を構成する画面間に含まれる冗長な情報(時間的に冗長な情報)を削除する仕組みを利用しています。
(2)また、図1-10の②に示すように、時間軸方向に流れる各予測誤差画面に着目すると、各画面を構成している画面内(空間的とも言う)の隣接した画素同士も強い相関関係(密接な関係:似たような画素値)をもっています。隣接した画素同士が似たような画素であるため、画質を損なわない程度に冗長な情報(具体的には画素を表現する情報)を削減することが可能です。このときDCTを適用することにより、冗長情報の削減を行うことができます。
(3)このようにして時間的(画面間)、空間的(画面内)な冗長情報を除いた結果の信号にエントロピー符号化を加え、さらに送るべき情報を削減します。
このような「動き補償フレーム間予測、DCT、エントロピー符号化(可変長符号化)」によって、圧縮符号化の処理が行われています。
なお、本コーナーで登場する「入力画像」がアナログ画像なのか、画素単位のデジタル画像なのかについては、圧縮符号化にとっては、厳密に区別しなくてもよいのです。その理由は、前述のQ.4で説明したように、アナログ入力の画像信号と非圧縮の(PCM)デジタル画像信号は実効的に等価であるからです。
いずれにしても、画像圧縮符号化の処理は、非圧縮PCMデジタル映像を入力し、その入力された画像に圧縮符号化を行い、受信側では受け取った圧縮データ(ストリーム)を復号することによって、非圧縮PCMデジタル画像(ただし符号化に伴う雑音や歪みを伴っている)を再現する処理ということになります。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:最新の情報圧縮技術〔H.264/AVC〕編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 H.264/AVC教科書」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。
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