Q14:ICカードはなぜ必要?
デジタル放送を受信するのにどうしてICカードが必要なのですか?
デジタル放送では、多彩なサービスを受信することができます。
例えば、
(1)ペイ・パー・ビュー(Pay Per View、番組ごとに料金を支払う仕組み)と呼ばれる有料放送サービス(図1-13)
(2)データ放送を利用した双方向サービス
(3)NHKの受信確認のための自動表示メッセージ
など、さまざまな放送事業者が新しい放送サービスを行っています。
この時に必要となるのがICカードであり、デジタル放送ではB-CASカードと呼ばれて利用されています。ここで、B-CAS(BS-Conditional Access Systems)とは、BS条件アクセス・システムという意味で、CASは「限定受信方式」という日本語訳が広く使われています。
例えば、ペイ・パー・ビュー(図1-13)では、有料放送を受信するために、受信者は事業者に対して料金を支払わなければなりません。その際に、放送事業者はこのB-CASカードを利用して、受信する本人であることを特定し、その個人に課金を行います。
CASというのは、一種の暗号化システムのことで、暗号化によって個人情報を安全に流すことができるように配慮されています。現時点では、それらの情報をやり取りするために電話回線が利用されていますので、B-CASカードを利用するだけでなく、実際には、電話回線をデジタル・テレビもしくはデジタル・チューナーに接続する必要があります。
このB-CASカードは、BSデジタル放送で初めて使用されたためBという文字が最初についていますが、CS100°デジタル放送や2003年12月から始まった地上デジタル放送でも同じカードを利用します。
また、2004年4月5日から、BSデジタル放送と地上デジタル放送の各放送局は、コピー制御信号をデジタル・テレビ放送に導入しました。この信号とともに録画された番組は、他のデジタル録画機器へのダビングはできないような仕掛けになっています。このことにより、著作権を保護しようというのが目的です。アナログ録画機器での録画や、アナログ放送の録画はこれまで通りとなっていますが、デジタル放送では、このコピー制御信号を有効に機能させるため、B-CASカードを受信機に差し込むことが必須となりました。そのため、B-CASカードを受信機に差し込まないと、たとえ無料放送であっても、デジタル・テレビが見られないようになっています。
このように、多彩なサービスを受信したり、多様な機能を利用するため、B-CASカードはデジタル放送に必要不可欠なカードとなっています。
B-CASカードの運用については、ビーエス・コンディショナル・アクセス・システムズ(略称:B-CAS)という会社があり、主要な放送局と通信事業社の出資を受け、中立的な運営を行っています。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(上)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。