≪1≫注目されるモバイルWiMAX
ここ10年におけるネットワークの大変革のトピックスの1つにモバイル・ネットワークの急激な発展がある。携帯電話は通話だけの利用に止まらず、メールやインターネット・アクセスが普及し、今や必需アイテムとなってきた。このようなモバイル・ネットワークにおいて、IPベースのモバイル・アクセス手段として、現在の携帯電話よりもさらに高速な通信が可能な新しい通信方式として、WiMAXが全世界的に注目されている。日本では、すでに全国モバイル・ワイヤレス・アクセス(MWA:Mobile Wireless Access)バンドの免許がUQコミュニケーションズ(※)に交付され(2007年12月)、つづいて固定系(FWA)地域バンドではCATV事業者など42社に免許または仮免許が交付(2008年6月)されており、2009年からの商用サービスが計画されている。図1に2.5GHz帯の周波数割り当て状況を示す。
※ KDDIが中心となって設立されたWiMAX通信事業者
http://www.uqcommunications.jp/index.html
≪2≫モバイルWiMAXの通信方式
表1に、代表的なワイヤレス・サービスの通信方式を示す。
WiMAXには、固定無線アクセス用として規定されたIEEE 802.16-2004規格をベースにした固定無線アクセス用の固定WiMAXとIEEE 802.16-2004のWirelessMAN-OFDMA無線インタフェースを修正・補足したIEEE 802.16e-2005・モバイルWiMAXがある。モバイルWiMAXは、携帯電話(2G~3.5G)でのデータ通信に比べて伝送速度が速く、Wi-Fi(無線LAN)に比べて最大通信距離が長いという特長をもつ。また、高速(120km/h)での移動中でも通信ができ、かつハンドオーバー(基地局の切り替え)を行うことが可能である。また、ITU-R(国際電気通信連合・無線通信部門)では、2013年頃を目指してIMT-Advanced(4G)の標準化が行われる予定である。このIMT-Advancedの標準規格を見据えてモバイルWiMAXとの互換性を満たすための検討プロジェクトが「P802.16m」として開始されている(2006年)。802.16m規格は、802.16e規格と同じく6GHz以下の免許バンドを使用し、高速移動時にも100Mbps以上のスループットを達成することを目標にしている。
≪3≫モバイルWiMAXの特性と位置付け
図2に、代表的な無線通信とモバイルWiMAXの位置づけを示す。
モバイルWiMAXは、既存の移動通信方式(3G)と比較して、伝送速度が速く、ビットあたりの通信コストを低減できるなどのコスト効果が見込めるため、定額制モバイルデータ通信サービスの実現が期待されている。
一方、第3世代携帯電話(3G)のデータ通信は、現状ではモビリティは高いが使用できる伝送速度が不足している。(注)
また、無線LANの場合は、伝送速度は速いがモビリティが不足する。
このように、現状においてモバイルWiMAXは、3Gや無線LANなどの領域を補完する位置付けにあるが、すでにITU-Rにおいて、3Gの第6番目の陸上無線インタフェースの国際標準として承認されているところから、今後はさらにそのカバレッジを拡大していくと期待されている。
(注:伝送速度については、3.9GのLTEなどで高速化が予定されている)