≪2≫語学力よりも論理力のほうが重要!
■ あと、国際標準化の会合となると、英語での論戦が主体とになりますが、語学力はどの程度、問われるのでしょうか。

瀬戸康一郎氏
瀬戸 私もそんなに英語は達者なわけではないのですが、プレゼン資料などは事前に準備できますので余裕があります。しかし、標準化活動を通して、少し違うなと思うところは、日本人はロジック(論理)を組み立てるのが下手なところがあるように感じます。日本人は論理的に筋道を立てて、「こう、こう、こうだからこうです」というような展開よりは、実現したいことの結論などを先に展開してしまうところがあります。そういったところは、各国の教育の違いのようなものを感じます。
■ なるほど、論理力ですね。
瀬戸 ですから、正直申し上げて、欧州人やインド人、中国人とかでも英語がうまくないメンバーもいますが、そういう人たちが堂々と下手な英語でも論理的な説明をしますので、参加者にアピールし聞いてもらえます。これまでは、日本人がやると論理的なプレゼンが弱いので、うまくアピールしないところがありました。しかし、ここ数年は日本人でもそういう論理的なプレゼンができる若手が次々と登場してきていて心強く、頼もしさを感じます。
■ 具体的には?
瀬戸 例えば、10GE-PONをめぐって、実現技術や方式などの議論で韓国勢などと競争になったりします。韓国の場合も通信事業者が802.3ah(EFM)を展開していますが、GE-PONについては、日本で先に普及してしまったので、次の10GE-PONでは追い抜いてやろうというような強いライバル意識を感じます。しかしこのような場面でも、最近の日本勢は正々堂々と論戦できるようになってきています。
≪3≫会社のビジネスと国際標準化活動の両立は?
■ 瀬戸さんは、イーサネットの標準化活動(IEEE 802.3WG)を1991年から17年間も続けてこられましたが、17年もたつと会社のポジションとして、現役を卒業してマネージメントをやってください(管理職になってください)というような話が出てきませんか。そうすると、せっかく国際的な人脈もできて、技術の流れもわかってきてというときに卒業せざるを得なくなってしまう。これは、企業としてというよりも国としても大きな損失のような気がしますが。
瀬戸 そういう傾向はありますね。私は幸いにして、結構若いころからIEEE 802.3WGに参加させていただき、現在もずっと参加させていただいています。私の場合も、そろそろ後輩に譲れとか、後継者を育てろとかプレッシャーはありますが、何とか標準化活動への参加を続けさせていただいています。それは、国際標準化活動や人脈の重要性について、会社の理解があってのことですので、そこは感謝しています。
■ やはり、標準化活動を通して瀬戸さんが競争力のある先進的なネットワーク製品を開発し、市場に提供し、現実的なビジネスをしてきているからなのでしょうね。
瀬戸 それと、上司に恵まれ、理解してもらっていることが大きいですね。以前、私の上司もIEEE 802の会合に参加されたこともあり、IEEE 802の標準活動の意義や重要性を理解いただけていることが大きいと思います。
日本から参加する若い技術者の多くは、会社の一般社員あるいは技術者として参加しているため、管理職になると次から若い人でという感じでバトンタッチしていってしまうところがあります。そのため、何年もかけて築いてきたIEEE 802の会合に参加している国際的な個人対個人の人間関係とか、人脈などが消えてしまうのです。これは大変な損失なのですね。米国の参加者(メンバー)などは10年、20年選手の方々がたくさんいらっしゃいます。かれらは人脈も知見も豊富です。私は、そのような方々と良い友だちになっていますが、何か困ったことがあると、相談にのってもらったりアドバイスをいただいたりしています。