[特集]

NGN時代を支えるイーサネット(802.3ah)標準:その逆転のドラマ(第2回:最終回)

2008/08/22
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪4≫WBB Forumで、なぜPBB(802.1ah規格)に人気があるのか!

■ 話は少し変わりますが、今、当社のこのWebサイト(WBB Forum)にご執筆いただいている瀬戸さんの連載「802.1の標準化動向/802.3の標準化動向」がとても人気があります。とくに「広域イーサネット向け802.1ah PBB標準とPBB-TEの動向(第6回)」は、たいへん人気のある記事で、現在も多くの読者からアクセスがあります。これは、例えばNGNとも大きく関係しているイーサネット技術だからなのでしょうか。

瀬戸康一郎氏
瀬戸康一郎氏

瀬戸 ありがとうございます。私も御社のWBB Forumは愛読させていただいておりますので、その人気ぶりに私自身たいへん驚いています。

■ それはなぜだと思いますか。

瀬戸 とくに、802.1ah規格の「PBB」(Provider Backbone Bridging:プロバイダ・バックボーン・ブリッジング、通信事業者幹線網向けブリッジング)という用語をGoogleでググると、この記事がヒットするからではないかと思ってます(図2、3、4)。つまり、この新しい技術を日本語で解説している文献がまだ少ないのだと思います。

現在、PBBに注目が集まっている理由は、MPLS(Multi-Protocol Label Switching、 固定長のラベル情報を使用してデータを転送する方式)に対抗する方式として期待されていること、さらに、NTTが、次の広域イーサネットは802.1ahのPBB方式で構築する、というような発表を行ったため、NGNとの関係で注目されるようになったのではないかと思います。


図2 802.1広域イーサネット関連規格(瀬戸氏資料による)(クリックで拡大)



図3 802.1ah PBBの概要(瀬戸氏資料による)(クリックで拡大)

※ PBB:Provider Bachbone Bridging
※ DA:Destination Address、宛先アドレス
※ SA:Source Address、送信元アドレス
※ B:Bachbone、基幹網
※ I:Intermediate、中間



図4 広域イーサ方式の比較(クリックで拡大)


■ このPBB方式の標準化の状況はいかがですか?

瀬戸 PBBについてはつい最近(2008年7月)に標準化が完了しましたので、それに関するレポートと、PBB-TE(Traffic Engineering、トラフィック・エンジニアリング。経路制御技術。トラフィックの通過経路を特定したり、高速に経路切り替えを行うためのトラフィック制御技術)などについてWBB Forumで紹介したいと思っています。

≪5≫WBB Forumで、なぜ「802.1ag イーサネットOAM」にも人気があるのか!

■ 次のWBB Forumの連載のテーマとしてぜひお願いします。それから、もう1つ、当Webサイトでは「802.1agでNGN対応のイーサネットOAMを標準化へ(第3回)」についてもとても人気があるのですが。

瀬戸 これについては、以前、米国の調査会社が、広域イーサネット・サービスは、2004年で3,600億円の市場で、それが2008年度までに3兆円まで増える、すなわち、4年間で10倍近いすごい伸びがあるというような予測を発表したことも注目される要因となっています。この背景には、今後、国際的にも、イーサネットをキャリア(通信事業者)のサービスにどんどん適用していこうという動きがあるからなのです。

それだけではなくて、イーサネットの信頼性を向上させるために、既存の電話網で使用されているソネット(SONET ※2)並みの、信頼性の高い網管理をめざして、いわゆるOAM管理をしようということで「802.1agイーサネットOAM」(※3)が標準化されました。

IEEE 802.1ag規格の正式名称は、「CFM」(Connectivity Fault Management、接続障害管理)ですが、一般的には「イーサネットOAM」と呼ばれています。

※2 SONET:Synchronous Optical Network、同期光ネットワーク(ANSI標準規格)。国際標準(ITU-T)規格としてSDH(Synchronous Digital Hieralchy(同期デジタル・ハイアラキー)がある。両者とも信頼性の高い電話網などの広域網における速度標準などを規定している
※3 イーサネットOAM:OAMとは、Operation Administration and Maintenanceの略であり、通信事業網における「運用、管理、保守」を意味している。すなわちIEEE 802.1agは、イーサネットなどレイヤ2技術を用いた広域網において、保守管理の手段を提供するための方式の規定である

■ イーサネットOAMという用語のほうが普及していますね。

瀬戸 イーサネットOAMというのは、通信がいつもきちんとできているかという障害監視以外にも多くの管理機能を備えています。しかし、802.1agではあえて範囲を絞って、「コネクティビティー・フォルト・マネジメント(CMF)」を規定しましょうということになりました。そういう意味ではCMFはOAMの一部の機能ということになります。

この802.1ag標準以外には、802.1agで決まった方式をベースしたITU―T勧告(※4)もできています。

※4 ITU-T Y.1731勧告:OAM functions and mechanisms for Ethernet based networks、イーサネット・ベースのネットワークに対するOAMの機能と仕組み、2006年1月
http://wbb.forum.impressrd.jp/report/20060922/280

■ 現在、NTTのNGNでは、イーサネットOAMの機能が必須となっていますが、世界各国の動向はいかがでしょうか。

瀬戸 今後、イーサネットOAMはキャリアにとって、必須機能になってくると思います。現在、国際的に見て日本ほど広域的なイーサネット・サービスが普及している国はありません。これに対し、海外のキャリアは、現在、例えば電話網ベースのソネット(SONET)やフレーム・リレーで提供しているサービス・レベル(質)を落とさないで、今後の代替としてイーサネットを使用したサービスを提供したいというアプローチをしています。

一方日本は、すでにフレーム・リレーや専用線などのサービスありましたが、それとは別の形の新しいサービスとしてイーサネット・サービス(広域イーサネット・サービス)を提供するようになりました、新しいサービスなので、当初は、必ずしも提供されるサービス・レベルは十分でないところもありました。しかし、このような日本の広域イーサネット・サービスの進め方は、正しかったと思います。つまり、最初から新サービス(広域イーサネット・サービス)が100%SONET並みの信頼性が実現できなければ、サービスの移行ができないといっていたら、なかなか新しいサービスに移行できませんでしたからね。

■ おっしゃるとおりですね。今や、広域イーサネット・サービスはNGN時代における、非常に重要なサービスのひとつとして成長してきています。

瀬戸 このようなことから、まずは先に広域イーサネット・サービスを提供し始めたというのが日本で、それが今非常に普及しているのです。しかし、引き続き広域イーサネット・サービスの信頼性を向上させ、安定性を高めていくことが求められています。このため、さらに品質の向上に向けて、イーサネットOAMなどが標準化されてきているのです。

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