≪3≫国際的な「競争と協調」をどう実現するか
井上 友二氏
(ICT標準化・知財センター
センター長)
続いて、主催者側を代表して、ICT標準化・知財センター センター長に就任した井上 友二氏は、ICT標準化・知財センターを通して、国際的な「競争と協調」をどのように実現するか、その決意を述べた。
『日本は1990年代初頭のバブル崩壊以来、グローバル化の波に大きな影響を受け、その結果として、ICT(情報通信)産業を支える各メーカーも、キャリア(通信事業者)もなかなか海外市場に進出しにくい状況が続いている。
このような状況を打開するため、総務省の審議会における検討結果を受けて、わが国の産・官・学すべての人々の知恵を出し合って国際競争力を強化していこうということで、このほどICT標準化・知財センター(iSIPc:アイシップ)が発足するに至った(図2、表3)。
今、グローバル化というとき、とかく国際競争ということが中心になりがちであるが、このICT標準化・知財センターは、競争の中に協調を入れていく方針を取っている。図3に示すように、このセンターは日本の標準化に関係している8つの組織(前出の表3参照)が集まって運営し、図4に示すICT標準化戦略を基本にして取り組んでいく。図4の中に、ICT標準化戦略マップ、ICTパテント・マップを示しているが、この部分が重要な課題である。
これまで、グローバル競争下において、ICTに関する標準化や知財、特許(パテント)などの価値ある情報が、それぞれ各企業の戦略として位置づけられ、閉じた個別の情報となっていた。
現在、国際的にみて情報通信関係の標準化団体は、150組織くらいある。この150もの組織を調べて、各組織が何をしているのか個々の企業が調べるのは、たいへんな努力が必要であり、不経済でもある。
少なくとも、このような個々の価値ある情報を共同でデータベース化して整備していこうではないか。すでに、この150もの標準化団体には、日本の個々企業はほぼ網羅される形で加盟しているので、大学の先生方の力をお借りするなどして、皆さんの知恵を集めていきたい。このように情報を共有し、共有した中から、皆さんが「日本として、どこを強くしていく必要があるのか」、というような議論ができる場所として、当ICT標準化・知財センターを活用いただきたい。国際的な競争と協調をどのように実現していくのがよいか。とくに近隣のアジアの国々とどのように協調していくか、これがこれからの日本の生きる道のひとつではないか。当センターがその中心的な役割を果たせるよう努力していきたい』。