[特別レポート]

日本のICT産業は危機から脱出できるか(前編)=ICT標準化・知財戦略シンポジウム開催=

2008/09/05
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪4≫日本経団連の取り組みと、精力的な三菱電機の活動例

野間口 有氏(日本経済団体連合会 評議員会副議長 知財委員会委員長)
野間口 有氏
(日本経済団体連合会
評議員会副議長
知財委員会委員長)

日本の経済界を代表する日本経済団体連合会 評議員会副議長 知財委員会委員長:野間口 有氏(三菱電機 取締役会長)は、「企業活動で重要性を増す国際標準」と題して、日本経団連のいち早い国際標準化活動への取り組みとともに、参加者にも大きなインパクトを与えた三菱電機における具体的な活動を紹介し、ICT標準化・知財センターへの期待を述べた。

[1]日本経団連の国際標準への取り組み

従来のような標準化の目的に加えて、近年はWTO/TBT協定(※1)による国際標準の義務化がクローズアップされ、いかにすぐれた製品をつくろうとも国際標準に合致していなければ市場を獲得できないリスクがある。まさに「国際標準を制するものが市場を制する」時代に突入している。

日本経団連としては、すでに2003年7月に、産業技術委員会の下に国際標準化戦略部会を新設したり、産業界の国際標準化への取り組み状況を分析、2007年5月には技術の国際標準化に関するアクション・プランを発表するなど、の活動を展開してきた(図5)。

さらに、「知的財産権推進計画2008」の策定に向けて(2008年3月)、国際標準化への取り組みの強化として図6の(a)~(d)の4項目を提言するなど、積極的な活動を展開してきている。

※1 WTO/TBT協定:WTO協定の一部を構成する貿易の技術的障害に関する協定。各国の規制等で用いられる強制規格や任意規格を国際規格に整合化していくことで、規格による不必要な国際貿易上の障害を排除し、公正で円滑な国際貿易の実現を目的としている
※ WTO:World Trade Organization、世界貿易機構。多角的貿易交渉の結果を実施する国際機関として1995年1月に発足。日本は、WYO発足と同時に加盟
※ TBT:Technical Barriers to Trade、貿易の技術的障害


図5 技術の国際標準化に関するアクションプラン(2007年5月)(三菱電機 野間口氏資料より)(クリックで拡大)



図6 「知的財産推進計画2008」の策定に向けて(2008年3月)(三菱電機 野間口氏資料より)(クリックで拡大)


[2]三菱電機の国際標準化の具体的な活動例

次に、私の所属する三菱電機の国際標準化の具体的な活動例(図7)として、ISOから、IEC、ISO/IEC JTC1、ITU、各フォーラムにおける標準化活動を紹介したい。三菱電機では、現在450名の技術陣が約800の国内、国際の標準化活動に参加しており、産業用フィールド・ネットワークから、宇宙・衛星、道路交通システム、暗号(MISTY、KASUMI等)、映像符号化(H.264)、3G(W-CDMA)、光通信、DVD、Blu-ray、デジタル放送などに至るまでの多彩な標準化活動に参加している。


図7 国際標準化の活用例(三菱電機 野間口氏資料より)(クリックで拡大)


今回のシンポジウムのテーマの1つでもある標準知財の活用の仕方(図8)については、図8に示すように2つの形がある。例えばMPEG-2やH.264、あるいはW-CDMA、DVDなどのような多くの企業の努力によってできた標準は、特許の対価を求めるパテント・プール(※2)の形とする。一方、三菱電機の得意とする暗号アルゴリズム(MISTY)や産業フィールド・ネットワーク(CC-Link:Control and Communication Link)のような標準については、用途や市場の拡大を図るために無償で開放する形とし、これによって当社のビジネスも広く展開できるようになる。このような両面が求められている。

現在、三菱電機が関与している、MPEG-2、DVD、W-CDMAやデジタル放送などに関するパテント・プールの具体的な実例を、図9に示す。


図8 標準知財の活用(三菱電機 野間口氏資料より)(クリックで拡大)



図9 三菱電機が関与するパテント・プール(例)(三菱電機 野間口氏資料より)(クリックで拡大)


最後に、図10の4項目を挙げ、『日本経団連として、日本発の優れたICT技術を世界標準にするために、今後のICT標準化・知財センターの活動に大きく期待していること、さらに産業界として精一杯の協力をしていきたい』と決意を述べた。

※2 パテント・プール:ある技術に関して特許権者が複数いる場合、特許権者などによって特許(パテント)を管理・運用する組織をつくり、そのメンバーが必要なライセンスを利用できるようにする仕組み


図10 ICT標準化・知財センターへの期待(クリックで拡大)


関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...