[特別レポート]

日本のICT産業は危機から脱出できるか(後編)=ICT標準化・知財戦略シンポジウム開催=

2008/09/10
(水)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫ものづくりの企業:国際標準の採用は国際的な義務

櫛木 好明氏(松下電器産業 シニアフェロー)
櫛木 好明氏
(松下電器産業 シニアフェロー)

次に登場した、松下電器産業 シニアフェロー 櫛木 好明氏は、同社のアナログからデジタルへのマルチメディアの開発を推進。とくにデジタル・テレビやDVDなどの開発を行った後、モバイル技術の開発を担当。残念ながらモバイルについては海外から撤退せざるを得なかったが、現在は、次世代の3.9G(LTE)の仕掛けをしている。櫛木氏は、同社が国際的なものづくりの企業として、国際標準などをどう考えているか、具体例を挙げて紹介した。

『ものづくりの企業としては、国際標準を採用することは実質的には義務になってきており、世界の趨勢になってきている。例えば、図1に示すように「政府調達は国際規格品でなければならない」となってきているということは、イコール一般の企業も国際標準規格品を使うということでもある。国際的に見ても、2003年に中国がWTO(World Trade Organization、世界貿易機構)に参加し、2006年にベトナムも参加するなど、国際標準を採用することは国際的な流れになってきている。

これまで、企業の中で標準化の担当者はあまり日の当たらない仕事であったが、最近は大きく変わってきており、もっと日を当てなければならないという傾向が強くなってきている。


図1 国際標準採用が実質的に義務となる(クリックで拡大)


図2に、事業から見た3つの「標準化」に関する競争という点からみると、大きく3つの段階に分かれる。その一つは、グローバル標準向けての知財の埋め込み競争である。ここでは各社いろいろな特許を開発するため、知財ロイヤリティを生むなど商品力を形成する大きなポイントとなっている。第2は、国際標準をベースにして、世界の地域標準・国別標準さらに業界標準を早期に掌握すること、第3として国別、業界別に事情に応じて最適化した商品の開発を行うことが重要である。このようにして、商品力を向上させていくが、その商品力は国際標準をベースにして、図2に示すように、知財ロイヤリティ、成長力、原価力、品質力、安全性などのファクターで決まってくる。


図2 事業から見た3つの「標準化」に関する競争(クリックで拡大)


また、ICT機器というのは、ITUやIEC,ISOなどの国際標準化団体が決めるデジュール(国際)標準を中心に対応してきたが、アナログからデジタルに代わったときに、非常に速度のいる商品開発が要求された。このため、市場競争が決める「デファクト標準」、企業仲間が決める「フォーラム標準」も重視される時代となってきている。この3つの標準をいかに有効に組み合わせて活用していくかが重要である(図3)。最近は、ITUなどでもFC(Focus Group、特定の技術に焦点を当てて集中的に標準化を審議するグループ。例:FG IPTV)などの仕組みによって、従来3年かかっていたデジュール標準化作業が大幅に短縮され、速度競争に対応できるようになってきていることは、注目すべき変化である。


図3 ICT機器関連規格は3つの標準化活動を適切に活用(クリックで拡大)


図4に、ICT分野における当社の主な国際標準化活動例を示す。図4に示すPLC(高速電力線通信)、IPTV、映像・音声コーデック、3.9G/4Gモバイル通信などは、いずれも、多くの方式が論議されており、方式をめぐる標準化の競合が各社間で激しくなってきている。また、これらのいろいろな標準を組み合わせた商品も開発されてきている。このため、複数の標準化活動を束ね、調整したり複合的に対応することが重要な時代となってきている。


図4 ICT分野での主な国際標準化活動例(クリックで拡大)


今、時代の流れが、固定と移動を統合するFMC(Fixed Mobile Convergence)や放送・通信の融合時代に突入している。このような時代にあるだけに、今回設立されたICT標準化・知財センターが8つの団体(前編表3-1表3-2参照)の横串を通して設立されたことは、標準化活動を有機的に展開するうえで非常に重要であり、時期を得たものと期待している』。

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