≪4≫ICT分野で巻き返すため、「情報通信国際戦略局」を設置
河内 正孝氏
(総務省 大臣官房総括審議官)
国を代表して登場した総務省 大臣官房総括審議官の河内 正孝氏は、総務省では、通信・放送の融合・連携の進展、ICT市場のグローバル化の進展に伴って、2008年7月に組織再編を行い、ICT総合戦略の策定を目指して、新しく情報通信国際戦略局を設置(図9)したと報告。この局はICTに関する技術政策、総合政策、国際政策を総合的に扱う戦略組織であり、これを基盤とした日本のICT産業の危機脱出のための取り組みと、その決意を語った。
『情報通信国際戦略局を設置した背景には、例えば、ダボス会議(毎年スイスのダボスで開催)とも呼ばれる「世界経済フォーラム」で、日本の情報通信(ICT)の競争力は、2007年で127ヵ国中19位と、欧米はもとより韓国・香港・台湾・オーストラリアなどよりも下になっており、総務省としても大きな危機意識がある。2003年頃には、世界の3位、4位であったが大幅に後退してしまった。このような中で、日本のICTをどのように巻き返していけばよいか。総務省が総力を挙げて取り組んでいく決意で、この情報通信国際戦略局が誕生したわけである。
この組織では、図10に示すように、まずICTについての全体的なビジョンをきちんと立案していく。2番目として、民間ニーズを踏まえた国際展開の支援、あるいは標準化・技術戦略の有機的な連携などの施策を実施していく必要がある。さらに、世の中の動きに合わせて通信と放送の融合やNICTの予算などを効果的に使って、全体として国際競争力を高めていく必要がある。
具体的には、2008年6月27日に答申いただいた「我が国の国際競争力を強化するためのICT研究開発・標準化戦略:情報通信審議会答申」(下記URI参照)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080627_6.html#bs1
の中に、数百頁に及んで何をすべきかをすべて盛り込んでいただいた。その中心に据えられているのが、まさに「ICT標準化・知財センター」(図11)であり、このセンターを軸に技術戦略、標準化戦略を展開していきたい。
図11の下側に7つのピンクの枠があるが、例えば、上の2つのピンクの枠はICT国際標準化戦略マップの策定、ICTパテント・マップの策定などデータベース的な内容を整備し、各企業あるいは今後標準化などで活躍する人たちの共通の情報にしていきたい。
このような活動を支える予算的な資源として、今年度(2008年度)から全体として1.6億円を計上し、その活動を支援。来年度については、可能であれば3倍程度に予算を増やして、皆さんの活動を本格的に下支えできるようにしていきたい』。
≪5≫まとめ:何よりもICT標準化・知財センターの基礎データの整備を!
安田 浩氏
(東京電機大学 教授)
最後にパネル・ディスカッションのまとめとして、コーディネータの東京電機大学 安田 浩教授は、次のように述べた。
『パネリストの皆さん、ICTに関する戦略や人材の育成など、いろいろなお話ありがとうございました。お話にもありましたように、ICT戦略をつくるには、まずデータが必要である。そこで、ICT標準化・知財センターが基礎データをしっかりつくり、それを戦略に結び付けていくことが重要である。ここで、注意する必要があるのは、データにはプラスの側面と、マイナスの側面があるが、両方ともきちんと出して欲しい。ただし、日本の社会ではマイナス情報を出すと、だからダメと言うように、否定的にとらえられる傾向があるのでその出し方についてはぜひ気をつけていただきたい。
今後、このICT標準化・知財センターが、日本のICT産業の国際的な発展の戦略基地として活躍されることを大きく期待している』。
【終わり】
日本のICT産業は危機から脱出できるか(前編)=ICT標準化・知財戦略シンポジウム開催=