[スペシャルインタビュー]

通信・放送の融合を実現したNHKオンデマンド(IPTV)戦略を聞く【後編】

2009/01/29
(木)
SmartGridニューズレター編集部

≪5≫NHKオンデマンド普及のために注力していること

■ 今後、NHKオンデマンド普及のために注力していく部分を教えてください。

木田実氏(NHKオンデマンド室 室長)
木田実氏
(NHKオンデマンド室 室長)

木田 やはり、NHK本体が良質のコンテンツを作ってくれることが一番重要なことです。見逃してしまった場合にも、どうしても見たいと思えるような魅力的な番組がないと、どんなに便利なサービスでもなかなか見てはもらえないですよね。

そういう意味では、人気の高かった大河ドラマ「篤姫」(宮崎 あおい主演)などのコンテンツがあればよかったのですが、大河ドラマは通常、放映の2年前に企画・制作されるため、篤姫のキャスティング(配役)が決まった時点では、NHKオンデマンドを見込んだ出演交渉をしていなかったのです。しかし、今年(2009年)から放映している「天地人」(妻夫木 聡主演)は、あらかじめNHKオンデマンドでの配信を見込んで出演交渉をしているので、最初から配信しています(図7)。


図7 NHKオンデマンドのサービス内容の例(クリックで拡大)


■ NHKでも時々海外のドラマや映画を放映されていますが、海外のコンテンツについてはいかがでしょうか。

木田 すでに少しずつ有名な海外ドラマを追加しています。権利者はハリウッドやBBCなどになりますが、年末年始には、「ホテルバビロン」や「ER13」「プライミーバブ」なども配信しました。これらも「海外ドラマ」も充実させていきたいと思います。

■ 例えば、以前人気のあった韓国の「冬のソナタ」など、韓流ドラマはいかがですか。

木田 著作権あるいは著作権料などのことも含めて、当面は韓流ドラマを提供する予定はありません。また、人気のある韓流ドラマは、すでに他のPC系サイトで配信されており、かなりダブってしまうところもありますので、作品を選んで配信していきたいと思います。

≪6≫今後のNHKオンデマンドへの期待

■ NHKオンデマンドの今後の成長に期待しています。

木田 ありがとうございます。このNHKオンデマンド・サービスはお客様が番組コンテンツを購入するだけに留まるものではありません。NHKオンデマンドにお金を払って番組を見ていただくと、NHKでは「この時間にこんなに面白い放送をやっているのか。毎回お金を払うのはもったいないから、次はテレビ放送を見よう」となる場合もあります。そうした通常のテレビ放送の視聴との相乗効果にも期待しています。

NHKがこのようなサービスを提供する大きな理由の1つとして、視聴者との“接触率”の向上があります。こうしたNHKオンデマンド・サービスの力で、若い人を含めて多くの方にNHKの番組を見ていただけるようになれば、「NHKを見ているんだから、受信料も払おう」と思っていただけるようになるのではないでしょうか。そこにつなげられるように努力していきたいと思います。

――おわり――

通信・放送の融合を実現したNHKオンデマンド(IPTV)戦略を聞く【前編】


プロフィール

NHKオンデマンド室 室長 木田実氏

木田 実(ぼくだ みのる)

現職:NHKオンデマンド室 室長

【略 歴】
出身地:滋賀県
1952年1月26日生まれ
1975年3月 早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒
1975年4月 日本放送協会(NHK) 記者職
         岐阜局 名古屋局を経て
1985年   報道局 経済部記者
2000年   放送総局 アーカイブス建設事務局 総合企画室を経て
2005年6月 アーカイブス・オンデマンド推進室
2008年4月 NHKオンデマンド室

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