≪3≫風力発電は発電設備のリードタイムが長い
〔1〕環境アセスメント(環境影響調査)の期間を半減へ
再生可能エネルギーにおいて、風力発電の発電設備は、リードタイム(開発に要する時間)が太陽光(住宅用:2~3カ月程度)に比べて4~5年程度と長期間必要とすることから、現在FIT制度開始後は、リードタイムが短い(1年以内に開発可能な)太陽光の導入が集中しているのが実態となっている。そこで、風力などの導入を加速化するために、現状では4~5年程度を要する環境アセスメント(環境影響調査)の手続期間を半減することを目指す検討が行われている。
一方、日本では、平野部における陸上風力発電の導入可能な適地が減少傾向にあることに加え、山岳部では工事用の道路整備などのコスト負担が増加してきているため、今後の風力発電の導入には、洋上風力発電の導入・拡大が不可欠となってきている。
〔2〕ポテンシャルが高い洋上風力発電
この海洋上に設置される洋上風力発電のポテンシャル(発電能力)は、陸上風力発電の約5倍程度も高いといわれている。また、陸上風力の場合は、騒音・低周波・景観などによる土地の制約や輸送の制約があるが、洋上の場合は大型風車の建設も可能である。
さらに、日本では陸上において風速7m/s(メートル/秒)以上の風況を得られる地域は少ないが、北海道や北東北、関東、九州などを中心に、洋上の風況に恵まれている。また、沿岸よりも沖合のほうが風況がよいため、安定的に電力を得ることができる。
このような洋上風力発電の導入・設置方法には、基本的に着床式と浮体式という2つの方式がある。着床式は、海底に直接基礎を設置する風力発電方式であり、浮体式は洋上に浮かんだ浮体式構造物を利用する風力発電方式である。水深が50m程度を超えると着床式ではコストが割高となるため、水深50 ~200m 程度の海域では浮体式風力発電機がコスト的に有利になると言われている。
≪4≫現在の日本の洋上風力発電
日本の洋上風力発電は、図3、表3に示すように、現在、陸上に接岸する形で行っている洋上風力発電として、すでに全国3カ所(北海道瀬棚港、山形県酒田港、茨城県鹿島港)で事業化が行われている。これらのうちの一部は、2015年度以降に、本格的な洋上風力への展開も進める予定となっている。
これらに続いて、経済産業省が支援する「銚子沖・北九州沖・福島沖」や、環境省が支援する「長崎県五島沖」の実証が研究段階に突入し、まさに、洋上風力発電の実証が本格的に開始する時代を迎えている。
図3 洋上風力発電(着床式・浮体式)の現状(日本国内)
〔出所 資源エネルギー庁資料
表3 日本の洋上風力発電の現状(図3の整理)