[スペシャルインタビュー]

東芝のスマートグリッド国際戦略≪前編≫

― エネルギー産業の再編と新ビジネスモデルの展開―
2015/01/01
(木)

ランディス・ギア社買収の背景

Takeshi Yokota

〔1〕スマートグリッドは社会インフラとして定着・普及していく

─編集部:いつ頃からスマートグリッドへの取り組みを始めたのでしょうか。

横田:スマートグリッドの世界的なビジネス領域や動向が明確に見えてきたのは、2009年の初頭からです。旧来から東芝は、電力メーター事業を展開してきました。この中で、世界的なエネルギーインフラに対するスマートグリッド時代への移行は、今後とも続いていき、やがてスマートグリッドは、人間社会の中で普通の仕組みとして定着し普及していくもの、という認識に立つに至りました。

 この結果、当社のスマートグリッドを構築するためのキーとなるハードウェアとして、スマートメーターとそれを通信ネットワークで管理連携するAMI注1システムをしっかりと世界に押し出せるビジネスにしていくことは必要条件であると考えました。そのような考えの下に、国際的にもこの両面でトップシェアをとっているランディス・アンド・ギア(Landis+Gyr、以下「ランディス・ギア」)を買収(2011年:本部スイス)したのです。ご存じのように、ランディス・ギアは、現在、スマートメーター市場で世界第1位(2013年)のプレイヤーであり、世界30カ国以上で、3,000万台以上のスマートメーターの納入および運用実績をもっています。

〔2〕ランディス・ギアを買収した理由

─編集部:なぜ、ランディス・ギア(Landis+Gyr)だったのでしょうか?

横田:同社の買収に際しては、国際的視点から似たような規模のグローバル企業をいくつか検討しました。この中で、ランディス・ギアは、スマートグリッドの検討が進んでいる米国で、その市場によく適合して、シェアが特に高いという特長がありました。

 米国の電力業界は、日本と異なり、すでに電力の自由化がいくつかの地域で行われています。米国の電力会社は3,000社以上あるといわれ、大手から村営や町営の小さい自治体エリアに至るまで、数多く存在しています。

─編集部:もう少し具体的に説明していただけますか。

横田:ランディス・ギアは、米国のほぼ真ん中のカンザスシティ(Kansas City)にサービスオペレーションセンターを設けています。同センターでは、クラウド型のコンピュータで、自分たちが設置したスマートメーターからの情報を使って、もちろん契約に応じてですが、いろいろな段階・深度で事業者のサービスを代行しています。

 日本でいえば、電力会社が行っているような各種業務サービスまで、同社が運営するセンターに代行をお願いできます。ここでは、電力料金のユーザーへの通知や回収などの初歩的な「サービスビジネス」から、さらにはこれらを核とするスマートグリッドから配電のサービスオペレーションを幅広く支えるソリューション機能を展開しています。これが同社の特長で、当社との幅広いシナジーによるさまざまな複合要素を考慮した結果です。


▼ 注1
AMI:Advanced Metering Infrastructure、スマートメーター通信基盤

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