災害・有事に求められるAP
〔1〕AP(アクセスポイント)への要求機能
このような災害・有事の際のAPには、次のような機能が求められる
- メッシュWi-Fi機能〔マルチメッシュ機能:目的の異なるネットワークパス(通信路)を共存させるメッシュルーティング機能〕
- アダプティングアンテナ(通信品質を向上させるアンテナ)などによるロングレンジ機能(長距離通信機能)
- 停電時に備え、AC(交流)からバッテリー(直流)への自動切り替えと、バッテリーによる3日間のフルトラッピング(連続)運用をサポート(バッテリーは内蔵)
- WoW(Wake on Wireless LAN):Wi-Fiにつながっていて人間が立ち入れない場所にある端末(パソコンやスマートフォンなど)の電源を遠隔から投入する機能
- プライオリティ(優先順位の設定)が可能なネットワークコンフィグレーション(ネットワークの構成。メッシュルーティングの実現)
- 干渉状態にあるメッシュパス上のAPをスリープ(休止状態)させる機能(スタンバイ状態させる:自律型が望ましい)
- 同報機能(全体あるいはグループに一斉に通知する機能)
- ロケーションフィック(ネットワーク強調、自律型)
- 平時における帯域貸出機能(トラフィックが混雑し周波数帯域が不足している場合の貸し出し機能)
- メッセージのSnF(ストアー&フォワード)
- IPマルチキャスト(IPパケットの一斉同報通信)およびエージェント(端末からのメッセージを解釈して処理する)機能
キャリア | 自治体 | 提案する自衛戦略 | |
---|---|---|---|
対応の範囲 | 有事前の十分な範囲 | 限定された施設(地点中継) | 人工に比例して確率的 |
対応開始までの時間 | 長い(数日かかるケースが予想される) | 耐震強化により無瞬断 | 瞬時 |
サービスの時間 | 普及し通常運用 | 3日程度 | |
目的 | 行政/民間 | 行政 | 民間 |
課題 | キャリアの社会的責任は大きく、費用の捻出が課題 | 民間までサービスを開放したいが膨大な費用 キャリアのシステムに類似し冗長? |
カバレッジは保障されないが、人口に比例 費用は最小限 |
図1:災害・有事のエリアと生存(および各種通信ネットワークの容量)の分布
表1に指摘した通り、キャリアのネットワークの役割は、一定品質を全エリアにわたって確保すること。過剰なエリアや、集中したトラフィックに対応できないエリアができてしまう。メッシュネットワークの役割は、災害・有事の時の人口分布にある程度比例したネットワークの容量が確保できることが特徴である。
自治体などが設置している災害時のシステムは、どちらかと言うと自治体施設を地点間で結ぶ(例:役所と消防署)ような連絡を目的とされるため、エリアではなく、ピンポイント(図1:内赤線:狭いエリアしかカバーしない)に大容量の通信を可能とするような設備になる。
〔2〕APノードのメニュー
また、APノードのメニューとしては、次の3種類程度のものが求められる。
- 3Wi-Fi AP:幹線ルート用・商用(2.4GHz 11n+5GHz 11n/ac+Wi-Fi)
2.4GHz帯のIEEE 802.11nと5GHz帯の IEEE 802.11n/11ac、その他のWi-Fi対応のAPの3種類が求められる。
- 2Wi-Fi AP:商用/ハイエンド家庭用DBDC(2.4GHz 11n+5GHz 11n/ac)
DB/DC(Dual Band/Dual Concurrent、デュアルバンド/デュアルコンカレントのように、1つのチップで、2つの周波数帯域(例:2.4GHz帯と5GHz帯域)をサポートし、それぞれ独立に動作可能(Dual Concurrent)なアクセスポイント(AP)が求められる。
- 1Wi-Fi AP:Lowエンド家庭用(主にフロントエンド)
一般家家庭にはIEEE 802.11bあるいは11g対応などの低速な家庭用Wi-Fiアクセスポイント(IEEE 802.11nの場合もある)などが設置される。
〔3〕スマートフォン(アプリのみ)
一方、ユーザー端末となるスマートフォンには、次のようなアプリを搭載している必要がある。
- 災害・有事に起動するアプリ
- 放送受信用のアプリ
- 位置情報取得用のアプリ