[クローズアップ]

沖縄県・宮古島市「すまエコ」プロジェクトに見る新離島モデル

― 地産地消で1地域すべての電力消費を目指す―
2015/02/28
(土)
舟橋 俊久 名古屋大学エコトピア科学研究所 教授

現在、沖縄県宮古島市にて「宮古島市全島エネルギーマネジメント(EMS)実証事業」(以下、「すまエコ」プロジェクト)および「来間島(くりまじま)再生可能エネルギー100%自活実証事業」が行われている。宮古島市では、1地域で作られた電気で地域内の電力消費をすべてまかなう離島モデルを目指すという、全国でも初めての試みを行っている。
同プロジェクトについての視察注1とともに、宮古島市役所の三上暁氏に、事業内容やその目的、取り組み状況などについて取材した内容をもとにレポートする。

東京から2,000kmの宮古島市の位置づけ

〔1〕宮古島市がかかえる3つの課題

宮古島市は、離島県である沖縄県沖縄本島のさらに離島に位置する。宮古島市は宮古島、池間島、来間島(くりまじま)、伊良部島、下地島、大神島の6島からなり、総面積約200km2のうち宮古島が8割を占める(図1、表1)。これらの島は隆起珊瑚礁でできた平坦な島で大きな河川はなく、台風や干ばつなどの被害を受けやすい自然環境にある。

図1 沖縄県・宮古島市の位置図

図1 沖縄県・宮古島市の位置図

〔出所 http://www.city.miyakojima.lg.jp/syoukai/gaiyou.html

表1 宮古島市のプロフィール

表1 宮古島市のプロフィール

そのため宮古島市では、次の3つの課題を抱えている。

(1)食料やエネルギー資源を島外に依存しており地産地消による資源循環が望まれている。

(2)ライフスタイルの変化や産業経済活動の活発化に伴う自然環境への負荷が増大し、環境資源でもある自然環境の保全が必要となる。

(3)人口減少による地域の衰退に対し、地域産業の振興による雇用の確保が必要である。

以上3点の課題を解決するため、宮古島市ではサステナブル・ディベロップメント(持続可能な成長)を基本理念に、さまざまな取り組みを進めている。

「すまエコ」プロジェクトの事業内容

宮古島市は、2009年1月に「環境モデル都市」に選定され、2050年までにCO2を69%削減する(2003年比)という大きな目標を掲げ、官民一体となった取り組みを進めている。

そのうちの1つである「すまエコ」プロジェクト注2は、現在進行中のプロジェクトである。全島でのエネルギー消費状況の把握や、エネルギー消費の適正化と再生可能エネルギーをより効率よく導入するために、次の3つの取り組みによって、需要と供給が協調したエネルギーの面的管理の事業化を目指している。

(1)需要家のエネルギー消費の見える化による省エネ行動

(2)全島でのエネルギー需要に応じた需要家側による消費シフト

(3)再生可能エネルギーの適時消費

実証期間は平成26(2014)年度(2015年3月)までで、実証参加メンバーとして、

  1. 家庭部門:200世帯
  2. 事業所部門:25カ所
  3. 農業部門:農業ポンプ19カ所

の需要家が参加している。


▼ 注1
琉球大学理工学研究科電気電子工学専攻と名古屋大学エコトピア科学研究所エネルギーシステム寄付研究部門の大学間交流会の一環として実施。

▼ 注2
「すまエコ」プロジェクト:宮古島市が県の委託事業として実施している「宮古島市全島エネルギーマネジメント(EMS)実証事業」の愛称。「すま」とは、「島(すま)に、スマートに、住まう」の意味である。宮古島の一人ひとりが1つとなって、これからも美しい自然を大切に守り、スマートにエコに取り組みながら、いつまでも住み続けられる豊かなエコアイランド宮古島にしていこうという試みである。

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