[クローズアップ]

沖縄県・宮古島市「すまエコ」プロジェクトに見る新離島モデル

― 地産地消で1地域すべての電力消費を目指す―
2015/02/28
(土)
舟橋 俊久 名古屋大学エコトピア科学研究所 教授

本気で事業化に取り組む宮古島市

宮古島市は2008年3月に「エコアイランド宮古島宣言」を行い、2009年1月、政府から「環境モデル都市」の認定を受けた。また、2009年8月には次世代エネルギーパークの認定を受けた。

2010年10月には宮古島にてメガソーラー(大容量太陽光発電:4MW)が運用開始しており、その後、電気自動車およびバイオ燃料を利用したクリーンエネルギー自動車の導入可能性調査、天然ガス資源量調査、小型電気自動車政策実証事業を実施するなど、宮古島市は離島の課題解決に向けて積極的な実証事業を行っている。

宮古島、来間島の2つのプロジェクトは離島ならではの取り組みであり、成果が期待される。特に、「すまエコ」プロジェクトでは、統合BEMSサーバ注8による複数ビルの管理、農業EMSサーバ注9による地下ダムポンプの管理など、技術的側面もさることながら需要家の啓発・宣伝のためキャラクターを作ったり、そのキャラクターが登場するイベントを演出したりと、ソフト面でも独特の工夫が見られた注10

とりわけ、離島のエネルギー管理について、実証事業を通じて構築・評価を行うことで、本気で事業化を目指している点は、今後大きな期待がもてる。こうした実証事業の成果が広く公表され、日本の離島エネルギー管理の課題解決に役立てていただきたい。

◎Profile

舟橋 俊久(ふなばし としひさ)

舟橋 俊久(ふなばし としひさ)

名古屋大学 エコトピア科学研究所 教授

1951年生まれ
1975年3月 名古屋大学 工学部電気工学科卒業
同年4月 株式会社明電舎 入社、電力系統解析、保護リレーシステム・分散電源制御システムなどの開発に従事。
2014年4月 名古屋大学 エコトピア科学研究所 教授、エネルギーシステムに関する研究に従事。
主な著書(共著)は電力自由化と技術開発(東京電機大学出版局)、スマートグリッドを支える電力システム技術(電気学会)など。


▼ 注8
統合BEMS:統合Building Energy Management System、統合ビルエネルギー管理システム。「すまエコ」センターの統合BEMSでは、インターネットを通じて複数のビルエネルギーを管理している。

▼ 注9
農業EMS:農業Energy Mana-gement System、農業エネルギー管理システム。農業揚水ポンプは地下ダムの水位が下がったのを検知して働くので、そのままでは計画的にエネルギーを使うことができない。そこで、このエネルギーを「見える化」し、ピークシフト/カットや太陽光発電電力の適時消費を行うことによって、宮古島全体のピーク時の消費電力を削減する。

▼ 注10
「すまエコ」のホームページ(http://pjs.sumaeco-miyakojima.jp/

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