セキュアなサービスを担保できる仕組み
SACM(図5)は、SA-W1の自動接続や集中管理を行うためのシステムで、設定情報(コンフィグ)を一元管理する。一方のSA-W1は、ネットワークに接続して電源を入れるだけで自動的にSACMに接続し、自身に必要な設定情報を取得して動作する。このSACMの仕組みによって(家庭やオフィスなどの)機器への直接的な操作は一掃され、遠隔から対象機器の設定、監視、管理を一括で行うことができる。
図5 SACMの仕組み
〔出所 2015年2月19日記者会見発表資料をもとに加筆〕
「SA-W1のようなICT機器を安全かつ完全にコントロールするためにはSACMの仕組みしかない。自動接続と設定非保存、サーバ側での完全管理は、他にない唯一のソリューション」と、石田氏は取得した電力データは個人情報であり、セキュアなシステムで管理されなければならないという重要性を説く。
さらに、SACMの公開されたAPIを利用すれば、他のシステムとの連携もできる。例えば、新電力事業者が自社サーバを開発したときにAPIで連携することによって、双方の良さが引き出され、違った仕組みができたりもする。
また、SACMに対応したSA-W1のようなアダプタは、他社でも開発ができるよう、オープンソースとなっている。
さらにSA-W1は、SACMからオンデマンドで、必要な機能を必要なときにだけ追加できるという「レシピ機能」により、将来にわたって、さまざまなデバイスをコントロールできる拡張性をもつ。例えば、今回実装されたECHONET Liteや今後実装が予定されているOpenADR注9などにも、柔軟な対応が可能となっている。
クラウド型自動検針システム「PMS」
〔1〕検針データの蓄積システム
新しく開発中のクラウド型自動検針システム「PMS」は、SA-W1からの検針データをクラウドに蓄積することができ、各事業者が使いやすいWebUI(コントロールパネル。Web User Interface)を提供する。
スマートメーター認証番号入力用の画面が用意され、システム全体の動作状況を表示しているのが、図6の「ダッシュボード」注10である。このダッシュボードでスマートメーターの状況を総括できるようになっている。
図6 ダッシュボードのイメージ(デモ用)
〔出所 IIJ提供資料より〕
このほか詳細のデータは個々にアクセスして取得でき、検針状況の集中監視や、異常検針データを検出し電力小売事業者への通知も可能となっている。また、各電力小売事業者のサーバに、APIで連携して検針データなどを移すこともできる。
同システムは、2015年6月1日にトライアル提供を開始する予定となっている。
〔2〕システム全体を表示するダッシュボード
図6を見ると、左側の円の欠けている部分が見えるが、この部分は、総数258台のスマートメーターのうち、動いていない機器ということを意味する。
この欠けた部分の内訳が、右側のオレンジの円である。その中で、設定はされているがまだ電源が入っていないものが濃いオレンジで、通信自体ができていないものが薄いオレンジ、という表示になっている。
また、デモ用のものであるが、ダッシュボードの下半分のグラフを見ていこう。
ここでは、1番上の折れ線グラフが、各新電力が調達している電力量(30分単位で取得したもの)。2番目のグラフが、過去の利用量からの予測値の上限で、一番下が予測値の下限、下から2番目の濃いグリーンが本日の実績値、というようになっている。
これによって、当日の朝から過去にさかのぼって、電力利用量の推移が把握できる。また例えばインバランス注11が大きくなる場合には、各需要家に対して省エネやデマンドレスポンス(需給調整)の指示を出すきっかけともなる。
〔3〕事業者はサービスに特化したビジネスが可能に
「このPMSでは最低限必要なものを用意して、データを渡すための入り口という位置づけ」「PMSを利用することで、顧客(事業者)は直接の機器管理をしなくてもよく、サービスに特化したビジネスに集中できるようになる」と慶野氏。
IIJ側は、SACMがもっている機能で機器の監視やソフトウェアのバージョンアップなどを行い、クラウド連携することで宅内の機器管理はSACM経由でできるようになっている。
また、需要家側に他のホームゲートウェイがあり、電力小売事業者がPMSとSACMの仕組みだけを導入したい場合には、これらの仕組みをホームゲートウェイの中に実装できる。
▼ 注9
OpenADR:Open Auto-mated Demand Respo-nse、オープンでオートマチックなデマンドレスポンスプロトコル。すなわち自動デマンドレスポンス(電力の需給管理)を行うためのオープン標準。OpenADRアライアンスで策定されている。
▼ 注10
複数の情報源から集めたデータの概要をまとめ、リアルタイムに一覧表示する機能や画面のこと。
▼ 注11
インバランス:消費電力量と発電電力量との差分のこと。