【インプレスSmartGridニューズレター 2012年11月号掲載記事】政府は、原子力損害賠償支援機構(以下、原賠支援機構)を通じて東京電力(以下、東電)に公的資金(1 兆円)を投入。50.11%の議決権を取得して筆頭株主となり、2012 年7 月31 日に実質的に東電の国有化を完了した。これは、資金難に陥った同社の経営を救済し福島第1 原発事故に伴う賠償や電力の安定供給を行えるようにすることが目的である。このような背景のもとに、東電が従来推進してきた独自性の強いスマートグリッド政策は全面的に見直され、今後導入予定の2700 万台のスマートメーター仕様の再検討や入札延期を決め、オープン化・国際標準を重視した方向へ転換することになった。そこで、原賠支援機構参与の1 人である東京大学大学院 浅見徹教授に、入札延期の真相から今後の戦略についてお聞きした。(聞き手:本誌編集部)
第1部 電力業界のオープン化を拓いた歴史的提言
◆東京電力:スマートメーター仕様の再検討と海外からの入札も可能へ
─まさか優良企業と言われてきた東電(表1)が、実質的な国営企業になるなど想像もつかないことでしたので驚いています。2011年3月の東日本大震災以降、被災地の早期復興の面からも、安定した日本のエネルギー・電力供給への期待が高まり、スマートグリッドへの関心が強くなっています。政府もいろいろな施策を前倒し、関連する企業も活発な動きを見せていますね。
浅見:そうですね。最近の動きの中では、原賠支援機構が参与注1に、「東京電力のスマートメーターの仕様に関する提言」注2などの策定への参加を依頼しました。私もその1人として参加しています。
─それはどのような内容の提言だったのでしょうか。
浅見:はい。これは欧米でもすでに取り組まれていることですが、スマートグリッド時代を迎えて、現在、東電においても、同社管内の各家庭に設置されている2700万台の「アナログの電力メーター」を、通信機能を備えたデジタル式の次世代の「スマートメーター」に切り替えていく計画が進展しています。この計画は、東電では2012年10月頃を目途に入札を行った後、順次導入する予定で進行していました。 しかし、震災以降、これまで東電が独自に進めてきたスマートメーターの機能やコストも含めた「仕様」を再検討し、市場競争の原理を導入し、海外からの入札も認める必要があるのではないかという意見も、政府内で強く出されるようになりました。こうした経緯から、東電のスマートメーター導入に関する「2012年10月の入札」は中止されることになり、国際的にオープンな市場競争に道を拓くことになったのです。
▼ 注1
後出の表2に示す5名の委員で構成。
▼ 注2
『東京電力のスマートメーターの仕様に関する提言』平成24(2012)年7月12日、原子力損害賠償支援機構参与、http://www.ndf.go.jp/press/at2012/20120712bt.pdf
◆表1出所
東京電力・会社概要を基に作成、
http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/company/annai/gaiyou/index-j.html
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