ONS 2015の展示に見るハードウェア/ソフトウェア・スイッチの最新動向
ONS 2015の展示会場では、最新のSDN/OpenFlow対応技術をテーマに各企業による展示が行われ、ハードウェアの通信装置のみならず、ソフトウェア技術も注目を集めていた。2014年にはなかったFPGA注4を活用した新機軸もあり、SDN技術の幅の広がりを感じさせた。ここでは、ハードウェア・スイッチ注5とソフトウェア・スイッチに分けて注目の展示を紹介する。
写真4 展示会場の様子
ハードウェア・スイッチの動向
〔1〕トータルI/Oは880Gbpsを実現するキャビウム社製XPliantプロセッサ
2015年のONSの展示会場において、もっとも注目すべき発表はキャビウム(Cavium、本社 米国カリフォルニア州)社のブースにて展示のあったXPliant(エクスプライアント)プロセッサだろう注6(写真5)。
写真5 キャビウムのXPliantプロセッサ
▲XPliantプロセッサの最大の特徴は、柔軟な物理ポート構成をメーカーの裁量で決められる点となっている。
キャビウムは、すでに複数のネットワーク機器ベンダにその試作量産版の配布を行っており、会場ブースでは、インベンテック(Inventec)社やライトン(LITE-ON)社など台湾のベンダを中心に3社の製品が展示されていた(写真6、写真7。ただし、静態での展示でSDNアプリケーションの動態デモンストレーションはなし)。
写真6 インベンテックの展示
▲インベンテックは、XPliantプロセッサを搭載したイーサネットスイッチDCS7032Q28Cを展示。
32個のQSFP28ポートを備え、各ポートは100Gbps/50Gbps/40Gbpss各/40Gbps/40Gbpss各に対応している。
写真7 ライトンの展示
▲ライトンによるスイッチの中心にも、XPliantが組み込まれている。
各社ごとに物理ポート構成は異なり、これはXPliantが少なくとも4つの製品シリーズとしてリリースされることによるものと推察され、もっともベーシックなモデルとなる型式CNX88061でもトータルI/O(すべての物理ポートの通信速度の合計)は880Gbpsとなり、想定しうる物理ポートは10ギガビットイーサネット(GbE)が48ポートに25GbEが16ポートというパワフルな構成を取ることができる。最上位の型式CNX88091を採用した場合には、25GbEを128ポートという構成を取ることができる。
キャビウムは、この新シリーズをコアにしたスイッチを設計する詳細なリファレンス情報をネットワークスイッチベンダ各社に提供する準備をしているとの談話もあり、2016年のONSまたはモバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress)などで、複数のブランドから新機軸のSDN装置が発表される可能性が高い。
従来の製品と比べて100倍近くの通信速度となる、このクラスのネットワーク・プロセッサが市場に投入されると、2016年がいよいよ待望の「商用SDN元年」となるかもしれない。そして、2014年から登場すると噂されているブロードコム(Broadcom)社の新製品(SDNへの対応が、レガシーな仕様のオプションではなく、ネイティブに対応しているとのことだが、詳細は未公開)も同時期に市場に投入されれば、レガシーなベンダも含めてSDN対応のネットワーク機器が来年の展示では多数発表されることも期待できるだろう。
▼注4
FPGA:Field Programmable Gate Arrayの略。製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路でありPLD(Programmable Logic Device、プログラマブル・ロジック・デバイス)の一種。利用者がプログラム可能なゲートアレイであり、このように呼ばれる。
▼注5
ネットワーク間の接続を行うネットワークデバイスで、送信された情報やパケットの宛先にのみ情報を届ける機能をもっている。
▼注6
http://www.cavium.com/XPliant-Ethernet-Switch-Product-Family.html