[市場動向]

世界のスマートメーター導入状況と各プレイヤーの現状

2012/11/01
(木)
新井 宏征 情報通信総合研究所(ICR)チーフコンサルタント

電力とICT(情報通信技術)を組み合わせ、電力の新しい使い方を実現するスマートグリッドは、関連する構成要素として、スマートメーターやHEMS(宅内エネルギー管理システム)/ BEMS(ビルエネルギー管理システム)、電気自動車、蓄電池、分散型電源など、さまざまなものが想定されている。このようにさまざまな側面から語り得るスマートグリッドだが、今回はその心臓部とも言えるスマートメーターに焦点をあて、世界における市場動向と企業動向を概観していく。

スマートグリッドにおけるデータの流れを整理すると、需要家(家庭や商業施設、産業用施設等)で生成されたデータが、スマートメーター、通信網を経て、電力会社や関連するサービスを提供する第三者に至る流れとなっている。このような流れ全体はAMI(Advanced Metering Infrastructure、高度メーター基盤)と呼ばれ、AMIの中でも、特に重要な要素となるのがスマートメーターである。

現在は需要家で生成されるデータをスマートメーター以外の手段で送信する方法も採用されているが、スマートグリッドが電力にかかわる取り組みである限り、電力量を計量する電力量計、つまりメーターは欠かせない要素となってくる。そのメーターのうち、(1)電力量の計量、(2)双方向通信、(3)電力の遠隔開閉という機能を具備したものがスマートメーターである。

世界におけるスマートメーターの導入状況

世界におけるスマートメーターの出荷台数と今後の予測を示したものが図1である。

これによるとスマートメーターの出荷台数は世界全体で見て、2013年頃までは急速に伸びていくが、2013年以降は導入速度が鈍化していくと予想されている。

国別に見てみると、米国では2012年5月時点で3600万台のスマートメーターがすでに導入されている。さらに2015年までには6500万台まで導入が進むと予測されている注1。これは、米国の半数以上の世帯がスマートメーター化されるという規模である。

欧州では「第三次EU電力自由化指令」と呼ばれることが多い“DIRECTIVE 2009/72/EC注2という指令により、2020年までに、国内の最低でも80%に導入することが定められている。ただし、これはそれぞれの国の状況を踏まえ、市場および消費者にとっての長期的に見た費用対効果等を評価し、その結果が肯定的だと判断された場合に進めていく際の目標である。

日本においては、資源エネルギー庁が2012年7月30日に開催した総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の第30回会合で「エネルギーに関する今後の重点施策(案)注3」を公表し、その中で2016年度末を目処に、総需要の8割をカバーすることを目標にスマートメーターを導入するとしている。

 


▼ 注1
“Utility Scale Smart Meter Deployments Plans, & Proposals”
http://www.edisonfoundation.net/iee/Documents/IEE_SmartMeterRollouts_512.pdf参照

▼ 注2
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/30th/30-3.pdf参照

▼ 注3
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/30th/30-3.pdf参照

◆図1出所
Worldwide Smart Meter Shipments to Surpass 140 Million Units Annually, According to IDC Energy Insights' Worldwide Quarterly Smart Meter Tracker(http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS23349012)を基に著者作成

 

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