スマートグリッドブームに火をつけたもの
こうして登場したスマートグリッドはインターネットと同様に、米国から火の手があがった。
2009年1月、米国に誕生した第44代オバマ大統領は、その選挙公約として「グリーン・ニューディール」注5政策を打ち出し、注目を集めた。さらにオバマ大統領は、スマートグリッドを米国景気対策法に組み入れ、米国の老朽化した電力設備注6を更新するため、スマートグリッドの技術開発に大型の公的資金を投じることを決定。このため、米国の大手IT企業が、この分野に続々と参入してきた。
こうした経緯を経て登場したスマートグリッドを国際的なブームとして決定づけたのは、2009年9月にNISTが発表した歴史的な「リリース1.0ドラフト版」であった注7。
このような経過を経て進展し登場してきたスマートグリッドは、今日いよいよ実用期を迎え、図2の右側に示すように、クラウドコンピューティングやM2M(国際標準化組織:oneM2M)との連携を深めながら発展しはじめたのである。
▼ 注5
グリーン・ニューディール(Green New Deal)政策とは、第44代オバマ大統領が、米国が直面している「世界金融危機」や「地球温暖化の気候変動の危機」「石油資源枯渇などのエネルギー危機」を解決するために掲げてきた選挙公約のひとつ。かつての第32代ルーズベルト大統領(1993年3月就任)が、1933年から進めたニューディール政策の現代版といえるものである。
▼ 注6
米国には約3000社とも言われる多数の発電会社や送電会社などがあるという。
▼ 注7
リリース1.0ドラフト版は、スマートグリッドの概念や理論的な構造をとらえやすくするために、明確な「概念的参照モデル」を打ち出し、関連する技術の標準規格やそのロードマップも紹介したバイブル的な内容であった。リリース1.0の正式版は、2010年1月に発表。〔関連資料:『日米欧のスマートグリッド政策と標準化動向2010』インプレスR&D、2009年12月、http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2010〕