[[創刊4周年記念:特集1]ー 電力自由化後の新展開 ー VPP、マイクログリッドに取り組む次世代電力事業と小売電気ビジネスの行方[前編]]

360社が参入した電力小売事業とその後の新しい展開

―「ネガワット取引市場」開始に向けて活発化するVPPへの動き
2016/11/10
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2017年4月の実施に向けた「ネガワット取引市場」創設への動きが活発化している。これらと密接に関連するVPP(仮想発電所)実証事業も進展しつつあり、新しいビジネスチャンスに期待が高まっている。
ここでは、新たに取り組みが発表された、4つのVPP実証事業を紹介する。

次ステージへと向かう日本の電力・エネルギー改革

 2016年4月1日に開始した電力小売自由化以降、登録小売電気事業者は、2016年

10月24日現在で約360社(356事業者)にのぼり、新しいサービスの提供や再生可能エネルギー(以下、再エネ)のビジネス化に向けて、電力市場を活性化させている。さらに、政府(経済産業省)は、家庭やオフィスにおいて、省エネなどによって節電した電力量(ネガワット)を売買できる「ネガワット取引市場」を、2017年4月に創設する準備を進めており、日本の電力・エネルギー改革は、次のステージへの展開が始まっている。

 ここでは、電力の小売全面自由化に続いて、2017年4月の「ネガワット取引市場」開設に向けて動き出したリソース・アグリゲーション注1によるVPP構築事業(表1)の動きをレポートする(注:「関西VPPプロジェクト」と「VPP構築を通じたリソースアグリゲーションビジネス実証事業」については、本誌2016年9月号を参照)。

スマートレジリエンスVPP構築事業

 横浜市と東京電力エナジーパートナー(以下、東京電力EP)および東芝の3者は、横浜市内におけるVPP(仮想発電所)の構築に向けた事業「スマートレジリエンス注2VPP構築事業」にかかわる基本協定を締結した。

 この3者は、これまで横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証事業で培った知見を活かし、また、2015年4月に発足した「横浜スマートビジネス協議会」(YSBA)において、防災性、環境性、経済性に優れたエネルギー循環都市の実現に向けて取り組んできた。今回のテーマ型共創フロント注3を活用した基本協定の締結によって、これまでの取り組みを加速させるとともに、2017年4月に予定されている節電取引市場(ネガワット取引市場)の形成にも貢献していく。

〔1〕具体的な事業内容

 地域防災拠点に指定されている横浜市内の小中学校(各区1校、全18校を予定)に、10kWhの蓄電池設備を設置し、東芝が開発した蓄電池群制御システムによって、図1に示すような構成となっている。

図1 横浜市と東京電力エナジーパートナー、東芝の役割

図1 横浜市と東京電力エナジーパートナー、東芝の役割

BCP:Business Continuity Plan、事業継続計画 出所 http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2016/pdf/160706j0101.pdf

(1)平常時には、電力需要の調整(デマンドレスポンス)のために東京電力EPが活用

(2)非常時には、防災用電力として横浜市が使用(図1、協定締結期間は2016年7月6日〜2018年3月31日)

〔2〕事業の特長

(1)エネルギー循環都市を目指す横浜をフィールドとした事業展開

 横浜市は、YSCP実証事業を通じたHEMSやBEMSなどの導入によって、すでに地域レベルでのエネルギーマネージメントを実践的に展開している。また、再エネなどの分散電源が市内全体の電力使用量の約10%も導入されており、最適なフィールドでVPP構築の有効性を検証する。

(2)VPPとBCP電源をパッケージ化した新たなサービス

 同事業は、蓄電池設備の効用を小売電気事業者とユーザーが分かち合う新たなサービスモデルである。具体的には、横浜市の公共施設(地域防災拠点)内に設置した蓄電池設備を、平常時は小売電気事業者が電力の需要と供給のバランスを維持するためにVPPとして活用するのと同時に、非常時には通信設備を数日間維持するためのBCP注4電源として利用できる。

(3)電力卸市場価格の変動にリアルタイムで追従する高度なIoT技術による群制御システムの導入

 YSCP実証事業で培った蓄電池群制御技術と運用ノウハウを生かし、同事業で想定している市場価格変動に連動したリアルタイムでの充放電運転を実現する新たな蓄電池群制御システムを、迅速に構築して導入する。このシステムでは、蓄電池設備、再エネの有効活用に向けて、次に示すような内容の実現を目指す。

 ①設置環境の特性、季節変動、天候などによって変化する充放電可能量の予測に基づく蓄電池制御

 ②複数の蓄電池ごとに、異なる充放電量を考慮したポートフォリオ管理・制御

 ③電力システム改革の進展に合わせた柔軟なシステム拡充


▼ 注1
リソース・アグリゲーション:太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーをはじめ、ヒートポンプや蓄電池、電気自動車(EV)などのリソース(分散電源)を統合(アグリゲーション)すること。VPPとは、このような分散電源を統合してあたかも1つの発電所(仮想発電所)であるかのように扱う技術。

▼ 注2
スマートレジリエンス:低コストで環境性が高く、災害に強い設備・街づくりを構築する取組み

▼ 注3
テーマ型共創フロント:横浜市から民間企業へテーマを示し、そのテーマに対する公民連携事業の提案やアイデア等を募集する仕組み。

▼ 注4
BCP:Business Continuity Plan、事業継続計画

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