注目されるETSIの「M2Mリリース1のコア標準」の3つの技術仕様
図4に示すように、ETSIのM2Mリリス1(出版時期は表2参照)のコア標準は、次の3つの仕様が策定され出版〔図4のP(Pub-lished)印〕されている(これらは、表2中のETSIのWebサイトからダウンロード可能)。
表2 ETSIのM2Mリリース1のコア標準の技術仕様(TS)
- ETSITS102689:M2Mサービスの要求条件
- ETSITS102690:M2M機能アーキテクチャ
- ETSITS102921:M2M通信におけるmla、dla、mldインタフェース注3
なお、図4に示すように、これらのほかに、すでに「ETSITR102691」(スマートメーター)やETSITR102168「M2Mサービスレイヤへの脅威の分析とその対応計測」の技術仕様も出版されている。
現在、ETSI内部ではすでに、次世代のM2Mリリース2の検討が開始されている。
それでは他のSDO(標準開発機構)からの提案はどうなっているのか。
米国TIA(米国電気通信工業会)のTR-50あるいは韓国のTTA(韓国通信技術協会)などからは提案がありそうだが、日本からの独自の提案はない。その理由は、例えばETSIのメンバーであるNECヨーロッパなどは、これまでもETSIに参加し深くTC-M2Mの標準化の審議に関係してきたので、NECが目指す内容については、すでにETSIの標準に含まれているからだ。
ETSIは、oneM2Mに対して先の3つの仕様注4をはじめとしていくつかの文書を、2012年9月12日の技術総会に提案した。
ETSIは最初のリリースについては2013年をターゲットとし、oneM2Mの標準化を完了させる意気込みである。つまり、基本的にはTC-M2M技術委員会で行っている標準化作業をoneM2Mに移して承認させたいということなのだ。
ここで、oneM2Mが当面目指す標準化の範囲(スコープ)について整理してみよう。
oneM2Mでは当初は、先に説明した「共通M2Mサービスレイヤ」にフォーカスし、これに関する技術仕様(TS)や技術報告(TR)を策定する。そして、それをメンテナンスしていきながら、全世界で使えるような標準にしていくことを目指している。具体的には、表3のようなスコープになる。
表3 oneM2Mがめざす当面のM2M標準化の範囲(スコープ)
日本のTTC/ARIBのoneM2Mに関する取り組み状況
それでは、日本のTTCやARIBにおけるonenM2Mへの取り組みはどのような状況なのだろうか。
日本にはSDOとして、
- 基本的に無線系の標準を担当するARIB
- 固定系ネットワーク標準を担当するTTC
の2つがあり、oneM2Mについては、両者は連携して対応している。図5に示すように、注5ARIBのoneM2Mの取り組みについては、すでに2012年7月24日にoneM2Mが設立されて以降、ARIBのモバイルパートナーシップ部会注6配下に、新たに「oneM2M対応WG(ワキンググルプ)」が2012年6月に設置され、2012年7月に設立されたTTCのoneM2M専門委員会と連携して行っている。
図5 日本における「oneM2M」の展開と国際貢献:TTCとARIBの役割oneM2M
TTCとARIBの具体的な役割分担についてはどうだろう。oneM2Mでは、現在、上位レイヤに位置する「共通M2Mサービスレイヤ」にフォーカスして標準化が検討されているので、当面、基本的にはTTCが中心となって、oneM2M委員会に意見を反映していくことになっている。図5に示すように、将来、oneM2M委員会で、無線からのアクセスが課題になるようになればARIBが対応するようになる。言い換えると、当初、oneM2Mで策定された技術仕様(TS)や技術報告(TR)は、基本的にはTTCのoneM2M専門委員会がそのダウンストリーム注7を行うということである。
また、図5の右側に示すように、TTC内にはITU-TFGM2M(ForcusGroupM2M)がWHO(WorldHealthOrganization、世界保健機関)と連携して推進している「e-Health」(健康)に対応するため、「スマートコミュニケーションアドバイザリグループ」注8内に「e-HealthWP」(ワーキングパーティ)注9を2012年7月に設置し、標準化の活動を展開している。
▼注3
mla、dla、mldインタフェースについては「OverviewofETSITCM2MActivities」のうちのスライド「M2M-HighLevelArchitec-ture」を参照。http://docbox.etsi.org/M2M/Open/Information/M2M_presentation.pdfmIa、dIa、mId(レファレンスポイントを規定)
▼注4
(1)ETSITS102689、(2)ETSITS102690、(3)ETSITS102921の3つ。
▼注5「oneM2Mパートナーシップ
設立の取組みと今後の動向」
http://www.arib.or.jp/osirase/seminar/no99konwakai.pdf
▼注6
ARIBは、M2M等を含む幅広い分野を対象とする必要が生じてきたことなどから、従来の「IMTPartnership部会」を、「モバイルパートナーシップ部会」に改称した。http://www.arib.or.jp/osirase/news/837-1.pdf
▼注7
ダウンストリーム:oneM2MやITU-Tなどで決められたいろいろな国際標準を、例えば日本の国の事情を考慮した日本の標準にする(TTC標準にする)という作業のこと。国際標準化の中には、その国の事情等を考慮したいくつかのオプション(付随する内容)が記述されているため、そのオプションを適切に選択する作業が必要となる。
▼注8
設立は2012年2月。「SmartComAG」と略記。http://www.ttc.or.jp/j/std/committee/ag/smart-com-ag/
▼注9
http://www.ttc.or.jp/j/std/committee/ag/smart-com-ag/e-h20120726/