ネット発電容量414MWのうち再エネ比率は70%
日本を代表する総合商社の1つである丸紅には、現在5つの営業グループがあるが、そのうち発電事業への投資や運営などを展開しているのが電力・プラントグループのなかの電力本部である。電力本部は、大きく海外発電事業を扱う海外電力プロジェクト部(第一部から第五部まである)と国内電力プロジェクト部に分かれている。
国内電力プロジェクト部は、特別高圧(2万V以上)および高圧(6,000V以上)の需要家に対して、全国6エリア(北海道電力エリア、東京電力エリア、中部電力エリア、関西電力エリア、中国電力エリア、九州電力エリア)で合計約119万kWの電力供給を行っている(2015年4月の数値、図1参照)。2015年度中には供給量を150万kWまで伸ばすことを目標としており、また東北電力エリアへの参入も検討している。
図1 丸紅の電力事業の概要
〔出所:丸紅株式会社)
図2 丸紅における国内電力事業電源比率(2015年8月31日現在)
〔出所:丸紅株式会社)
その供給を支える発電容量(ネット発電容量)は2015年8月31日時点で414MWとなっている。興味深いのがこの414MWの電源の内訳である。同社によれば、このうち風力が5%、水力が8%、太陽光が48%、バイオマスが9%となっており、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の取り扱い比率が約70%を占めている(図2)。
丸紅の再エネへの取り組み:唯一水力発電を自社保有するPPS
〔1〕洋上風力プロジェクトを牽引する丸紅
積極的に再エネ電源の開発に取り組む同社のなかでも、特徴的な取り組みが洋上風力である。同社は、2007年から愛媛県伊方町(いかたちょう)において三崎ウィンド・パワー〔平成16(2004)年8月設立〕による風力発電事業を営んでいるが、洋上風力への取り組みのきっかけとなったのは2012年3月に経済産業省から受託した「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業注4」である。これは世界初の浮体式洋上ウィンドファームを福島沖で事業化することを目的に、福島洋上風力コンソーシアムが取り組んでいるものであり、このコンソーシアムをプロジェクトインテグレータとして率いているのが丸紅である。
〔2〕地域に根づいた小水力発電
さらに同社はPPSで唯一、水力発電を自社で保有していることでも知られている。なかでも2000年に昭和電工から譲渡を受け、国内電力プロジェクト部長の福田知史氏自ら社長を務める三峰川(みぶがわ)電力株式会社〔長野県伊那市(いなし)〕では、ダムを利用しない小水力発電事業も営んでいる。
この三峰川電力のユニークさは、小水力発電事業を自ら営んでいることだけではない。同社のWebサイトを見ると、「新規拠点を設置し、全国各地での新規小規模水力発電所の開発」や「国内地方自治体との共同小規模水力発電事業」といったビジョンが掲げられている注5。
そのビジョンに基づき、同社は三峰川電力と同じ長野県にある茅野市(ちのし)や、山梨県北杜市(ほくとし)、福島県下郷町(しもごうまち)などで小水力発電設備の開発を行っている。
丸紅全体で見ると、現在では仕掛かり中のものも含めると全国で15カ所の水力発電所をもっている。今後も開発は積極的に続けていき、2〜3年後には30カ所、将来的には全国で100カ所の水力発電所を開発・運用することを目指している。
このように、風力や水力をはじめとした多種多様な再エネを利用するためには、不安定な電源を運用するという需給運用スキルが必要になる。丸紅では、長年にわたる経験から、30分同時同量注6を達成するための高度な運用スキルを築き上げてきている。
▼ 注1
電気事業連合会、「PPS(特定規模電気事業者)/需要家PPS」、http://www.fepc.or.jp/library/words/jiyuuka/kouri/hanbai/1225508_4598.html
▼ 注2
経済産業省 資源エネルギー庁、「特定規模電気事業者連絡先一覧」、http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/operators_list/
▼ 注3
丸紅株式会社プレスリリース、「低圧需要家向け電力小売事業での業務提携の件」、2015年8月31日、http://www.marubeni.co.jp/news/2015/release/20150831.pdf
▼ 注4
浮体式:洋上風力発電の導入・設置方法には、基本的に「着床式」と「浮体式」の2つの方式がある。着床式は、海底に直接基礎を設置する風力発電方式で、浮体式は、洋上に浮かんだ浮体式構造物を利用する風力発電方式のこと。
▼ 注5
小水力事業:三峰川電力株式会社(http://www.mibuden.com/p/6/5/77/)
▼ 注6
30分同時同量:30分間における実発電量と実需要量のそれぞれの合計値を一致させること。