丸紅と楽天の意外な接点
〔1〕老舗旅館がもつ小水力発電に注目
小水力発電の開発などをきっかけとして同社が築き上げてきたものがもう1つある。それは、有形無形の多様な資産をもつ日本各地とのつながりである。
あまり知られていないことだが、全国の中心部を離れた温泉地には、水力などを電源とする自家発電で電力をまかなっている老舗の温泉旅館が点在している。そのような旅館を多くの人に知ってもらい、予約などをしやすくしてもらうために、最近では宿泊予約サイトが大きな役割を果たしている。
実はここに丸紅と楽天との接点がある。全国にある老舗旅館を紹介する楽天(楽天トラベル)、その旅館がもつ小水力発電に注目する丸紅。実はこの両社が電力関連の事業で協業するのは冒頭で紹介した発表が初めてではない。
〔2〕丸紅と楽天の提携の始まり
2014年10月28日に、丸紅は「楽天との電力小売市場におけるエネルギー需要開発に関する業務提携について注7」というプレスリリースを発表し、楽天との業務提携を発表している。この業務提携で重要な役割を果たしているのが、楽天が加入しているエネルギー需要開発有限責任事業組合注8である。同事業組合は、エネルギービッグデータを活用したサービスの開発や販売、エネルギーマネージメントシステム(EMS)の企画や販売を主な事業内容とし、楽天のほか、グローバルエンジニアリング、東光高岳、エネットなどが組合員に名を連ねている。
同事業組合の事業の1つとして、簡易的HEMSの開発を掲げている。これは、機能は豊富だが、価格も高いHEMS(Home Energy Management System)ではなく、機能を絞る代わりに低価格で導入しやすくした簡易的HEMSを開発し注9、サービス提供につなげていくというものである(図3参照)。2014年10月の業務提携では、丸紅と楽天でこの簡易的HEMSの開発などを推進することを掲げていた。
図3 簡易的HEMSのイメージ
〔出所:http://energy.rakuten.co.jp/llp/service.html〕
▼ 注7
丸紅株式会社プレスリリース、「楽天との電力小売市場におけるエネルギー需要開発に関する業務提携について」、2014年10月28日、http://www.marubeni.co.jp/news/2014/release/00074.html
▼ 注8
http://energy.rakuten.co.jp/llp/
▼ 注9
当初設置に20万円ほどかかっていたものが、数万円ほどまで低価格化を実現した。