[クローズアップ]

丸紅が目指す新たな電力事業の次の一手

― 電力自由化目前、楽天との業務提携で狙う多様なサービス展開 ―
2015/10/11
(日)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

丸紅と楽天の協業の先に見えるもの:新たな低圧需要化向け市場に参入

〔1〕楽天経済圏へのエネルギーサービスの提供

 この流れから考えると、2015年8月に発表された内容はもう一歩踏み込んだ業務提携を目指すものと見ることができる。

 再エネを中心とした電源の開発や運用(BtoB)を手がけてきた丸紅は、2016年の電力小売全面自由化に向けて、低圧需要家向け市場(BtoC)に参入する足がかりを作らなければならない。一方、楽天はこれまでも楽天トラベル契約施設向けに再エネ電源の電力供給を行ってきた。

 その両社が業務提携を行うことで、まずは楽天トラベルや楽天グルメ、楽天ビューティーなど楽天が抱える多種多様な事業者に対して、丸紅が保有する再エネ電源から電力供給を行うことができるようになる。さらに、今後は、楽天のポイントシステムである「楽天スーパーポイント」を核として「楽天経済圏」に対して多様なサービスを提供する可能性が広がっていくことになる。

写真1 丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部長 福田知史氏

写真1 丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部長 福田知史氏

〔2〕2020年が1つの目標点

 現時点で明確なロードマップは公表されていないが、福田部長によれば、発送電分離が実現する2020年にはそれなりのプレゼンス(存在感)をもつような事業にまで展開していくことを目指しているとのことである。

 小水力発電など、日本各地の多様な資源を活用しながら電力事業を展開していく丸紅と、一般消費者の生活のすみずみにまでサービスを展開している楽天との業務提携から、今後どのようなサービスが生まれてくるのか、大いに期待していきたい。

Profile

新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、2013年よりプロダクトマネジメントに特化したコンサルティング会社である株式会社スタイリッシュ・アイデアを設立。ICT分野におけるリサーチから得た最新の知見に基づき、企業に対するプロダクトマネジメント制度の導入や新規事業開発、製品開発の支援を行っている。

◎取材協力

福田 知史(ふくだ ともふみ)

丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部長

1964年1月13日生まれ
1986年3月 東京大学 経済学部卒業
1986年4月 丸紅株式会社入社
1992年4月 ワシントンDC事務所
2007年9月 丸紅カリビアン・パワー社長/ジャマイカJPS社会長
2011年4月 国内電力プロジェクト部 副部長
2012年3月 福島洋上風力コンソーシアム・リーダー
2013年4月 国内電力プロジェクト部 部長 現在に至る

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