米国のクリーンエネルギー戦略
表3 CAFE規制(乗用車の燃費規制)とGHG規制(温室効果ガス規定)の目標値
出所 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/pdf/006_02_00.pdf
〔1〕米国連邦政府注5の動き
米国では、2013年6月、オバマ大統領が、「気候変動行動計画」を公表した。この計画は、米国内の温室効果ガスの排出削減についても言及され、米国環境保護庁(EPA注6)に対して、火力発電所に対する炭素排出基準(Carbon Pollution Standards)の設定を指示した。
これを受けてEPAは、2014年6月に、米国内の火力発電部門からの温室効果ガス排出量を、2030年までに2005年の72.3億トン(CO2換算)よりも30%削減することを目指す新たな規制案(通称:「Clean Power Plan」)を公表した。
このような変遷の後、COP21に向けて提出した約束草案については、2025年に2005年比28%の温室効果ガスの削減を目指すということが宣言されている。
また、米国では、自動車業界に関しては、乗用車の燃費規制(CAFE規制、Corporate Average Fuel Economy、企業平均燃費規制注7)と温室効果ガス規定(GHG規制、GreenHouse Gas規定)が制定されている。それぞれの目標値は表3の通りである。
〔2〕カリフォルニア州の「ZEV規制」
(1)ZEV(温室効果ガス排出ゼロ)規制とは
連邦政府による規制とは別に、米国でもっとも自動車の登録数が多いカリフォルニア州では、自動車メーカーに対して、独自の温室効果ガス排出削減規制であるZEV規制注8を打ち出している。
同規制はカリフォルニア大気資源局(CARB:California Air Resources Board)が1990年に策定したもので、各自動車メーカーは、販売自動車数の一定比率をZEVにしなければならないという規制である。ここでは、2050年に、1990年のカリフォルニア州の温室効果ガス排出量である4億2,400万トン(CO2換算)から80%削減した8,480万トン(CO2換算)以下とすることを最終のゴールとしており、そのために、2040~2050年には、新規販売自動車のほぼ100%をZEVにすることを目標としている。
(2)ACCプログラムの採択で厳しくなる基準
CARBは、2012年1月に、さらなる温室効果ガスの削減促進のため、ACCプログラム(Advanced Clean Cars Program)を採択した。このプログラムによって、2018年以降のZEVの定義が変更され、従来ZEVに含まれていたPHVとHVがZEVには含まれないことになった。
また、ZEV規制は、カリフォルニア州内で一定台数以上を販売している自動車メーカーに適用されていたが、適用される販売台数の数値が下げられ、クライスラー、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ、本田技研工業(ホンダ)、日産自動車(日産)、トヨタ自動車(トヨタ)、BMW、ヒュンダイモータ(ヒュンダイ)、Kia、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンが、EVとFCVのみで目標を達成することが求められている。
ただし、カリフォルニア州での販売数が比較的少ない、ジャガー、ランドローバー、マツダ、三菱自動車、富士重工業とボルボにおいては、ZEVとPHV、HVの販売で目標を達成することが許されている。
このような背景もあり、米国においても、特にEVとFCVの開発が急ピッチで進められている。
▼ 注5
米国連邦政府:Federal government of the United States
▼ 注6
EPA:United States Environmental Protection Agency、米国環境保護庁。
▼ 注7
企業平均燃費規制:米国で自動車を販売している企業に課される燃費基準。米国で実際に販売した自動車全体から平均燃費を算出し、既定の基準がクリアできないと罰則が科される。
▼ 注8
ZEV規制:Zero Emission Vehicle Regulation。ZEVとは、温室効果ガス(CO2)を一切排出しない自動車のことを指す。