次世代自動車を蓄電池/発電所として利用するV2H
スマートシティやスマートハウスにおける利用として、EVやPHVで蓄電した電気や、FCVで発電した電気を、家庭に送り電力として利用するV2H(Vehicle to Home)が注目を集めている。
〔1〕三菱自動車のPHV、日産のリーフ
三菱電機は、三菱自動車のMiEV(ミーブ)シリーズと、アウトランダーPHV、日産のリーフ、e-NV200に対応した、EV用パワーコンディショナー注10「SMART V2H」を販売している(図4)。
図4 SMART V2Hの構成イメージ
同製品は、世界で初めて、①電気自動車(EV)と②太陽光発電システム(PV)、③系統(電力会社からの電力)の3つの電力を同時使用することを可能にしたパワーコンディショナーである。EVについては、EVへの充電とEVから家庭内への電力の供給を可能にしており、家庭内にリモコンを設置することで、給電操作などをリモコンから行うこともできる。
現時点では、スマートハウスにおける蓄電池は、次の2つの選択肢が想定されている。
- ソーラーパネル+蓄電池をスマートハウスへ設置
- V2H対応のEV用パワーコンディショナーをスマートハウスへ設置
今後、例えば一戸建てでソーラーパネルと蓄電池を連携して自家消費を行うとした場合、この2つ機器への投資額、つまりスマートハウス購入者の負担は平均約250~300万円である(仮に補助金が出たとしても50~80万円程度)。なおかつ、このような家庭用蓄電池の容量は5~7.2kWh(家庭では約3日分賄える容量)程度である。
一方、V2H対応の車を蓄電池として利用する場合、例えば三菱自動車のアウトランダーの販売価格は約360~460万円と家庭用蓄電池よりやや高価ではあるが、蓄電池容量は12kWhで家庭用蓄電池の約2倍の容量となっている。しかし、家に設置された機器群の取り替え工事などの維持管理費や取り替え工事費などを考慮すると、EVの場合は車そのものを取り替えることで家の中の設置工事費はほとんど考慮しなくてもよいことを考えると、価格的にはあまり大差はないといえよう。
このような状況から、2016年度以降は、各メーカーからEV対応の「ソーラーパネルに必要なパワーコンディショナー」の製品化の公表も期待されている。V2Hの具体的な展開は今後に期待したい。
〔2〕水素エネルギーで発電した電力を家庭に利用する「MIRAI」と「CLARITY FUEL CELL」
トヨタのMIRAIをはじめとするFCVは、水素を燃料として発電し、家庭に電気を供給する方法でV2Hを可能とする。ここでは、代表的な例を見ていく。
(1)トヨタ「MIRAI」
MIRAIから一般家庭へ電力給電能力は、最大9kW(すなわち9kWの発電所)の電力の供給が可能であり、その供給可能電力量は約60kWh(一般家庭の消費電力量の6日分に相当する電力量)となっている(図5)。
図5 MIRAIの外部給電の仕組み
出所 https://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/ecopro/2014/pdf/zero/mirai_external.pdf
具体的には、MIRAIから一般家庭に電気を給電するための給電器(DC/ACコンバータ内臓)が別売されておりこれを利用して、一般家庭で電力を供給できる仕組みとなっている。
また、MIRAI車内には、AC給電可能なコンセントがあるため、車内であれば、パソコンなどの電気製品をつないで使用することが可能である。
(2)ホンダ「CLARITY FUELL CELL」
ホンダは、燃料電池自動車「CLARITY FUEL CELL」(写真1)を、2015年10月28日から開催された第44回東京モーターショー2015で初披露した。同車は、2016年3月にまずは自治体や企業向けにリース販売される予定で、これにあわせて外部給電器「Power Exporter 9000」(写真2)も販売される。その後、外部給電器も含めた市場における仕様状態や、顧客からの意見、要望を見て商用販売を開始する注11。
「CLARITY FUEL CELL」は、9kWの発電能力をもっており、「Power Exporter 9000」と組み合わせることで、一般家庭のおよそ7日分の電力を供給できるため、ホンダは、同車を「走る電源」として、災害時などにFCVが作る電力をコミュニティに提供できるとしている。
▼ 注10
パワーコンディショナー:太陽光発電パネルや燃料電池等が発電した直流電力(DC)を、電力会社の系統電力の交流電力(AC)に変換するインバータ機能などを備えた装置。太陽電池などの発電量に応じて出力電圧を制御したり、発電状況に応じて運転を開始したり、停止したりする制御を行う。