欧州のクリーンエネルギー政策の動向
EU(欧州連合)においては、2014年10月に、欧州委員会(EC)が2030年に向けた気候変動・エネルギー政策案(A Policy Framework for Climate and Energy in the Period from 2020 to 2030)に合意した。同政策案の具体的な内容については、次の通りとなっている。
(1)温室効果ガス削減目標:EU域内の温室効果ガス排出量を、2030年までに1990年の56.2億トン(CO2換算)と比べて最低でも40%削減する(加盟国ごとの目標は今後策定される予定)
(2)再エネ・省エネ政策
- 再生可能エネルギー:2030年の最終消費エネルギーに占める再生可能エネルギー比率を最低でも27%とする
- エネルギー効率:2014年時点での2030年のエネルギー消費量の予測値である18万8,700トン(石油換算)よりも、実際には27%削減できるようにする
EUは、COP21に提出する約束草案についても、(1)と同じく、2030年に、1990年比で少なくとも40%温室効果ガスの排出を減らすことを目標としている。
また、自動車業界に関しては、乗用車温室効果ガス規制があり、各自動車メーカーは、新車1台の平均CO2排出量を、2021年までに95g/km以下(1km走行時のCO2排出量が95g以下)とすることが規定されている。
日米欧の次世代自動車市場と導入目標
〔1〕日米欧と中国のEV/PHVの販売数
ここまで、日米欧のクリーンエネルギー政策と、自動車産業への規制について見てきた。次に、各国の実際の次世代自動車市場の動きを見てよう。
図2は、2009~2014年の日米欧と中国のEV/PHVの販売数の合計を示している。EV/PHVの累計販売数は、
- 2011年で約5万台
- 2012年で約15万台
- 2013年で約35万台
- 2014年で約70万台
となる。また、2014年の販売台数の割合を見てみると、米国が37%、EUが29%、中国が17%、日本は10%、その他の国・地域が7%となっている。図2から、米国では2012~2013年にかけてEV/PHVの販売台数が拡大しており、EUと中国では2013~2014年に大きく拡大していることがわかる。
図2 各国のEV/PHVの販売台数(2009~2014年)
出所 ICCTのWhite Paper http://www.theicct.org/transition-global-zero-emission-vehicle-fleet-collaborative-agenda-governments
図3は、IEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)が、次世代自動車の普及の予測を示したものである。2025年の車種別割合を見てみると、内燃機関自動車注9(HV、PHVを含む)が95.6%、電気自動車が4.4%となっており、2035年には、内燃機関自動車が84.4%、電気自動車が11.2%、燃料電池自動車が4.4%の割合になると予測されている。
図3 世界の車種別シェアの将来予測
出所 経済産業省、「自動車産業戦略2014」、http://www.meti.go.jp/press/2014/11/20141117003/20141117003-A.pdf、出典 IEA:ETP(Energy Technology Perspectives)2012
〔2〕各国のEV導入目標
各国の自動車業界における温室効果ガス削減のための規制と、自動車販売数から算出した、各国のEV導入目標台数を表4に示す。2020年以降にも目標を設定している国においては、その内容も示している。
表4 各国・地域の2020まで/2020以降のEV累積販売台数の目標値
出所 ICCT(The International Council on Clean Transportation)のWhite Paper(http://www.theicct.org/transition-global-zero-emission-vehicle-fleet-collaborative-agenda-governments)より、ICCTが各国機関の情報をもとに作成
▼ 注9
内燃機関自動車:燃料を燃焼させることによって、高温・高圧のガスを発生させ、それを直接利用してエンジンを動かす自動車のこと。ガソリン車、ディーゼル車、CNG/LPG車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車が含まれる。