[新動向]

CO2排出量削減/熱効率60%を実現した東京電力の最新鋭「川崎火力発電所」

― ガスと蒸気による「コンバインドサイクル方式」を採用 ―
2015/12/26
(土)
SmartGridニューズレター編集部

電力小売全面自由化が始まる2016年4月、東京電力(以下、東電)は、ホールディングカンパニー制を導入する。この新体制では、「燃料・火力発電事業」「一般送配電事業」「小売電気事業」という3つの事業会社が設立され、各社が独立して運営される。ここでは、2015年11月30日に開催された、コンバインドサイクル方式を採用した最新鋭の「川崎火力発電所」(総出力342万kW。建設中も含む)視察会の取材をもとに、東電の火力発電事業の取り組みや事業戦略をレポートする。

ホールディングカンパニー制による新体制

 東電が2016年4月に導入するホールディングカンパニー制では、持ち株会社となる東京電力ホールディングスの下に、

  1. 東京電力フュエル&パワー(燃料・火力発電事業会社)
  2. 東京電力パワーグリッド(一般送配電事業会社)
  3. 東京電力エナジーパートナー(小売電気事業会社)

の3つの会社が連なる新体制で運営される。

 これは、2016年4月から始まる電力小売全面自由化の際に、各事業会社それぞれが経営判断の意思決定を迅速に行い、変化の早い競争環境に柔軟に対応し、各事業会社の責任体制を明確化することによって、コスト意識を高め、生産性・競争力の向上につなげていくという狙いがある。

東電の燃料・火力発電事業戦略

 東電の燃料・火力発電事業として、「燃料上流事業」「燃料調達」「燃料受け入れ」「火力発電」のサプライチェーンにおいて世界と渡り合える電力ビジネスを展開できるよう、次の3つの戦略を立てている。

(1)第1の戦略:他企業とのアライアンスの結成
他企業とアライアンスを組んで火力発電用の燃料調達をしたり事業参画したりすることによって、「世界のいろいろな国からの燃料の調達を多様化させ注1」、「大容量な燃料をコミットすることによって好条件を獲得注2」することを目指している。

(2)第2の戦略:熱効率アップに伴う燃料使用量の削減
発電設備の熱効率を上昇させることで燃料の使用量を抑制する。

(3)第3の戦略:火力発電事業の生産性の倍増
定期点検工期の短縮や予兆管理によるトラブルの未然防止によって、効率的な発電所の運営を目指す。

(2)の燃料使用量の削減について、東電・川崎火力発電所では、2016年1月と10月に、ガスと蒸気による「コンバインドサイクル方式」を採用した、世界最高クラスの熱効率を誇る発電設備「MACCⅡ注3」(後述)を稼働する計画である。


▼ 注1
燃料調達の量を増やすことで、1つの国だけに頼らず、あらゆる国から燃料の供給を受けることが可能になる。

▼ 注2
他企業と連携することで、燃料資源の開発プロジェクトに対して多額の投資を行えるため、燃料調達に関してより好条件の権利が得られる。

▼ 注3
MACC:More Advanced Combined Cycle

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