世界の生産性の効率向上とイノベーション
表2 日本・米国・ドイツ、アジア諸国の生産性向上に関連する主な動き
(注)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/ 出所 内閣府配布資料・基-1「新ハイテク戦略 Innovations for Germany」、2015年1月29日やURLを参考に作成、http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20150129/siryo1.pdf、http://www.jsme.or.jp/msd/html/92/msd_seminar_140724_speaker02.pdf〕
IICの説明に入る前に、現在、世界各国で取り組まれている、IoTを基本にした産業界(製造業など)における生産性の効率向上とイノベーションについて、概略的な状況を表2に示す。
〔1〕ドイツ:「ハイテク戦略2020行動計画」とIndustrie 4.0
表2に示すように、2011年11月、ドイツ政府は、2020年に向けて産業界のハイテク戦略を推進するために「ハイテク戦略2020行動計画」(High-Tech Strategy 2020 Action Plan)を発表したことを契機に、2012年1月、第4次産業革命ともいわれるIndustrie 4.0に関する「Industrie 4.0ワーキンググループ(WG)が発足〔ドイツ科学技術アカデミー(acatech)やBoschが中心となって設立〕したことによって、全世界から注目されることになった。
翌年の2013年4月には、『戦略的政策「Industrie 4.0」の実現に関する勧告』に関する最終レポートが発表され注4、このIndustirie 4.0を推進する組織として2013年4月に「Industirie 4.0 プラットフォーム」が設立(事務局:BITOKOM、VDMA、ZVEI の3 団体)されたところから、国際的に注目を集めるようになった。
〔2〕米国:GEの「インダストリアル・インターネット」とIICの設立
このような流れを背景に、米国では、2012年11月、国際的企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)がIoTを産業分野に活用した「インダストリアル・インターネット」のコンセプトを発表した。
2014年3月には、通信事業のリーダーであるAT&T、インターネットのグローバルな牽引者であるシスコシステムズ、国際的コングロマリット企業であるGE、半導体のリーダーであるインテル、ソフトウェア・AIのリーダーであるIBMの5社によって、IICが設立された。
ここに、米国とドイツ(欧州)の産業界における生産性の向上を目指して、CPS(Cyber Physical System)注5をベースにした新しい時代に向かうイノベーションへのチャレンジが開始された。
〔3〕相次ぐ韓国・中国・インドの新戦略
このような流れは国際的な新しい潮流を生み出し、ドイツ、米国に続いて2014年6月には、韓国政府が「製造業革新3.0戦略」(Manufacturing Industry Innovation 3.0 Strategy)を発表した。続いて2014年9月に、インドのモディ首相が、外資の誘致政策を含めた「メイク・イン・インディア(インドでものづくりを)。Make in India」という製造業促進の産業政策を発表し、さらに、2015年5月には、中国政府は世界トップの「製造強国」を目指す国家プロジェクトとして、「中国制造2025」(Made in China 2025)のロードマップを発表した。
〔4〕日本で活発化するRRI、IVI、Industry 4.1Jの動き
このような国際的な新しい流れに対して、製造業分野で国際的に市場をリードしてきた日本では、2015年5月、政府のIoT時代における「ロボット新戦略」の方針のもとに「ロボット革命イニシアティブ協議会」(RRI:Robot Revolution Initiative:略称「RRI」)を設立。さらに、2015年6月、日本におけるIoTを活用した製造業の新たな連携の実現を目的に、機械学会をベースとしたIVI(Industrial Value Chain Initiative)が設立された。また、純民間ベースでは、ドイツのIndustirie 4.0をベースに、よりセキュアな「Industry 4.1J」実証実験プロジェクトをVEC注6とNTTコミュニケーションズが開始した。
▼ 注4
『 戦略的政策「 Industrie 4.0」の実現に関する勧告』。ドイツ科学技術アカデミー(acatech)とIndustrie 4.0ワーキンググループが作成。
▼ 注5
CPS:具体的には、インターネット上〔サイバー(Cyber)空間:クラウド〕のコンピューティング能力(IoT)と、センサーネットワークのようなリアルな物理的な通信技術〔フィジカル(Physical)、例:M2Mネットワーク〕とを連携させ、M2M/IoTに適応した新生産システムである。
▼ 注6
VEC:ブイ・イー・シー。Virtual Engineering Community、製造業、ビル、エネルギーおよび電力業界を対象にしたソリューション普及活動を展開している任意団体。会員数158(2015年11月時点)。