Industrie 4.0とIIC(Industrial Internet Consortium)
〔1〕Industrie 4.0と連携するIIC
ここで、ドイツが進めるIndustrie 4.0と米国が進めるIICを比較すると、図3に示すように、Industrie 4.0の場合は、IoTを活用することによって製造業、特にデジタルファクトリーを構築するという観点で推進されている。このため、日本にとってIndustrie 4.0は比較的類推しやすいプロジェクトであることから、大きな関心を集めた。
図3 インダストリー4.0とIICの比較
出所 Industrial Internet Consortium「The Industrial Internet Consortiumの活動展開と日本の産業界に課題について」
これに対してIICは、産業界の生産性の向上を目指す点は同じであっても、Industrie 4.0とは異なり、製造分野だけではなくヘルスケア分野、あるいは鉄道や航空機などの輸送分野、スマートグリッドなど、戦略の方向感や目指すカバー範囲が広い。同時に、IoTによる幅広い産業に対応した「ニュービジネスの創造」「ニューテクノロジーの開発」に主眼が置かれているのだ。
〔2〕IICにおける4つの実施事項
また、図4に示すように、IICは4つの実施事項(アクティビティ)を基本としている。図4に示すIICの4つの実施事項(アクティビティ)のそれぞれの内容については表3に示す。
表3 図4に示すIICにおける4つの実施事項
出所 各種資料より編集部が作成
図4 IICにおける4つの実施事項(アクティビティ)
出所 Industrial Internet Consortium「The Industrial Internet Consortiumの活動展開と日本の産業界に課題について」
〔3〕生産性向上にとっての障害とIICの役割
現在、インダストリアル・インターネットを取り巻く環境は、関連する企業(Industry)や学会(Academics)、国の政策(Government)や標準作成機関(Standards)、関連する技術(Technology)、セキュリティ(Security)、製造システム(Manufacturing)、各種データ(Big Data)などが個別に独立して実施されているところから、それらが重複していたり、相互接続性がなかったり、あるいは矛盾したりしているため、効率や有効性を阻害する可能性が考えられる。
このような非効率性を解消するため、図5に示すように、IICがソート・リーダーシップ(Thought Leadership)を発揮し、各関係組織や技術、標準の活動を1つの方向性に統合することを実現し、推進していく注8。
図5 IICの目的(1つの方向性に統合)
出所 Industrial Internet Consortium「The Industrial Internet Consortiumの活動展開と日本の産業界に課題について」
〔4〕IICと各標準化組織、フォーラム、コンソーシアムのリエゾン
IICが1つの方向性を目指していることから、表4に示すような多彩な標準化組織やフォーラム、コンソーシアムとリエゾン(連携)をとって活動している。
表4 IICが連携(リエゾン)している標準化団体、フォーラム、コンソーシアム(2016年1月時点)
出所 http://www.iiconsortium.org/liaisons.htm、参考サイト⇒http://postscapes.com/internet-of-things-alliances-roundup
前述したように、IICは標準を作る組織ではないため、すでに存在している既存の標準を評価し、インダストリアル・インターネットを実現するために体系化して整理する。さらに今後開発・策定されるグローバル標準に対して積極的に影響を与えていく。このため、次のような方針をとっている。
- コネクティビティ(接続性)を容易に実現するため、オープンスタンダードを奨励する。
- IICにおけるテクノロジーWGの活動を通じて、インターネットとインダストリアルシステムのインターオペラビリティ(相互運用性)に関するグルーバル標準の開発プロセスに対して標準化の要件をまとめていく。
- IIC活動において、標準化に関する重複した活動を削減し、厳格な要件に適合する標準規格が存在すればそれを推奨し使用する。