IICが推進するテストベッドの目的とその活用
すでに、前出した図4に示すように、IICは4つの実施事項(アクティビティ)を基本にして、産業における生産性の向上を目指している。ここでは、このうち、IICのテストベッドの目的や活用、およびテストベッドプロジェクトのライフサイクルの定義などにについて解説する。
〔1〕IICのテストベッドの目的と活用の方法
図4に示したように、IICのテストベッドはIICのアクティビティのなかで、オープンテクノロジーのアクティビティで開発された各種技術やセキュリティをテストベッドで検証し、課題が発見されたらフィードバックしてその改良や改善を行う重要な役割を担っている。
テストベッドとは、コントロールされた実証環境プラットフォームであり、IICのリファレンス・アーキテクチャ(参照アーキテクチャ。後述)に準拠している。ここで現実に使用される環境に類似した条件下でアプリケーションを実装し、テストを実施する。
テストベッドは具体的な商用システムを設計するうえで重要な役割を果たすため、IICのテストベッドに関するライフサイクルの定義や、IICにおけるテストベッド開発・評価の基準なども設定されている。
すでに9つのテストベッドがIICのWebサイトに公開されている注9。
インダストリアル・インターネット参照アーキテクチャ(IIRA)
〔1〕参照アーキテクチャ(IIRA)とは
次に、IICで実際にインダストリアル・インターネットシステムIISs(Industrial Internet Systems)を構築するうえで重要となるリファレンスアーキテクチャ(IIRA)注10についてその概要を見ていく。
インダストリアル・インターネットシステム(IISs)を構築するうえで、仕様書やマニュアルだけでは不十分である場合があるため、開発するシステムの「ひな形」を作り、実際に各種ソフトウェアやハードウェアを組み込み(実装して)、商用システムの開発者用に提供する簡易的な実装モデルのことである。
〔2〕開発システムのアーキテクチャと合意の形成
インダストリアル・インターネットシステムは、ヘルスケア(健康・医療)関係、エネルギー関係、製造関係、運輸関係、公共部門関係などいろいろな産業からのIICへの参加者によって、さまざまな複雑かつ最新のアーキテクチャが使用され構築される。
このため、開発するシステムにおいて相互運用性の際に発生する損失をはじめ、コストや開発期間の増大を避けるためには、参加者の間で開発するシステムのアーキテクチャに関して、早期に合意を形成することが重要な課題となる。
そのため、開発するシステムのアーキテクチャにとって、最も重要な構成要素は何か、それらの構成要素がどのように相互に影響し合うのかを、合理的に示す必要がある。これが、インダストリアル・インターネットシステムの参照アーキテクチャ(Reference Architecture of IISs)なのである注11。
今後の展開:新しいビジネスモデルへの期待
IICにおけるテストベッドの開発は活発に行われており注12、2015年9月に、スペイン・バルセロナで開催された国際展示講演会“IoT Solutions World Congress 2015”で、IICが提唱する参照アーキテクチャに基づく具体的なテストベッドを展示してデモを展開した。
今後、さらに完成度が上がれば、産業界におけるCPSを活用した新しいアーキテクチャとフレームワークによるIISsや新しいビジネスモデルが登場する日も近い。第4次産業革命が国際的に進展し、より高い生産性を実現して新しい産業のビジネスが活発化することを期待したい。
▼ 注9
http://www.iiconsortium.org/test-beds.htm
▼ 注10
IIRA:Industrial Internet Reference Architecture。インダストリアル・インターネット参照アーキテクチャ。
▼ 注11
このIIRAは、第1章から第17章までの構成で、全体が100ページ程度のものである。“Industrial Internet Consortium「Industrial Internet Reference Architecture(IIRA)”2015-06-04 Version 1.7、として公表されている。
▼ 注12
すでに9つのテキストベッドがIICのWebサイトに公開されている。http://www.iiconsortium.org/test-beds.htm